身分による差別 ― その事実

Caste - THE FACTS
New Internationalist No.380
July 2005 p18-19

 

25人に1人が職業と門地[訳注:家柄]に基づく身分階層(カースト)差別を受けている。その数は世界中で約2億5千万人から3億人、インドだけで1億7,900万人に上る。多くの国では差別を規制する法律が制定されているが、取り締まりはほとんど行われていない。

 

カーストに共通する特徴(1)
●物理的な分離―例えば、高いカーストの人たちと同じカップから飲むことや、水源[訳注:井戸など]を共有することが許されない。
●社会的な分離―異なるカースト間での結婚禁止など。
●死や汚物を扱う伝統的な職業に就く。
●カーストが低い人の仕事は低賃金であるため借金を抱える。インドでは、推定2千5百万人から6千万人が債務労働者で、借金返済のために奴隷のような条件で働いている。その大多数がダリットである。
●文盲、貧困、土地を所有しない割合が高い。
●低いカーストに対し罪を犯した場合、適用する法律が存在してもほとんど処罰されない。
●清浄と穢れ(けがれ)という概念に基づく偏見
●女性は、性、階級、カーストの三重の差別を受けている。デーヴァダシー制度の下、インド南部の州では、何千人というダリットの少女たちが神や寺院に捧げられる。彼女らは結婚できず、上位カースト男性への売春を強いられ、最終的に売春宿に売り飛ばされる。

インドのダリットに対する犯罪
多くの法律が制定されているもかかわらず、インドのダリットに対する犯罪はいまだに処罰されない。ダリットに対する残虐行為の件数は、1998年の7,445件から2002年には33,507件に跳ね上がったが、ほとんど有罪にならない。(2)

●1時間に2人のダリットが暴行を受け、毎日3人のダリットの女性が強姦され、毎日2人のダリットが殺され、ダリットの家が毎日2軒焼き打ちにあっている計算になる。(3)


<世界中に存在するカースト>

セネガル
コミュニティーの名前:ウォロフ民族社会で10〜20%を占めるニーノ(Neeno)、マンデ語が使用されている地域で人口の約5%を占めるニャマカロウ(Nyamakalaw)、そしてジョノウ(Jonow)(奴隷とその子孫)が差別を受けているカーストである。
人数:総人口の約15%
コミュニティーの名前:ニーノは鍛冶屋、皮職人、産婆、割礼施術者。ニャマカロウは鍛冶屋、吟遊詩人、皮職人。
法律:憲法は差別撤廃をうたっている。

ブルキナファソ(マリ、ニジェール、アルジェリア、リビアも含む)
コミュニティーの名前:トゥアレグ(Tuareg)コミュニティーの奴隷カーストであるベッラ(Bellah)。
伝統的な職業:上位カーストの「主人」の奴隷となり、無給の労働者として塩など商品価値のあるものを「主人」のために生産する。
法律:憲法はカースト差別を禁じている。

ナイジェリア(カメルーン北部と中部アフリカのチャド盆地も含む)
コミュニティーの名前:オス(Osu)、オル(Oru)、アドウエボ(Adu-Ebo)、オルマ(Oruma)、ウメ(Ume)、オウ(Ohu)、オモニ(Omoni)。さらにマンダラ山地地方の鍛冶屋や陶工カースト。
人数:200万〜400万人
伝統的な職業:オスは伝統宗教の高僧のアシスタント。マンダラ山地地方で社会の主要カーストに含まれていないのは、鍛冶屋、陶工、皮職人、機織職人、葬儀屋、産婆、太鼓奏者である。
法律:法律では、アナンバ州とエヌーグ州におけるオスのカーストが禁じられている。

モーリタニア
コミュニティーの名前:ハラーティーン(Haratin)
人数:9万〜30万人
伝統的な職業:ハラーティーン(黒いムーア人)は白いムーア人(ビダンBidan)の奴隷、あるいは元奴隷である。
法律:1980年に奴隷制度は公式に廃止された。

エチオピア
エチオピアの南西地方では、不浄は一時的なものでありうるが、清浄なものと穢れ(けがれ)たものという概念が社会で一般的に見られる。
伝統的な職業:皮なめし業、陶工、鍛冶屋、機織職人
法律:なし

イエメン(5)
コミュニティーの名前:アフーダム(Akhdam)…「召使」という意味。
人数:最も人数が多く貧しいマイノリティーは、推定20万人。
伝統的な職業:街頭清掃、雑役夫、歩兵、靴職人、女性と子どもは物乞い。半数以上が失業者。
法律:不明(訳注:ある日本人研究者からは「なし」という情報をいただきました。
2011年11月9日

ルワンダ(ブルンジ、コンゴ民主共和国、ウガンダも含む)
コミュニティーの名前:トゥワ(Twa)
人数:人口の1〜2%。権威や権力のある地位につく者はほとんどいない。
伝統的な職業:狩猟採集、陶工、道化師
法律:なし

ケニア
コミュニティーの名前:ワッタ(Watta)。インド人移民の間でもカースト差別が見られる。
人数:ワッタは2千〜3千人。
伝統的な職業:ワッタは、狩猟と採集を行う。
法律:あり

ニジェール(6)
コミュニティーの名前:トゥアレグス(Touaregs)、ハウサ(Hausa)、ジェルマ・ソンガイ(Djerma-Songhaï)、ペウルス(Peuls)、カヌリ(Kanouri)、グルマンチェマ(Gourmantchema)、ブードウマ(Boudouma)、イッサワガン(Issawaghans)
人数:ハウサが人口の54%、ジェルマ・ソンガイが22%、トゥアレグスは12%を占め、それぞれ独自のカーストを持っている。
伝統的な職業:床屋、肉屋、鍛冶屋、陶工、吟遊詩人(グリオ)、靴職人、機織職人、井戸掘業、奴隷
法律:1999年に制定

ソマリア
コミュニティーの名前:サブ(Sab)(「下位カースト」)、ミドゥガン(Midgan)またはマディブハン(Mahdibhan)、トゥマル(Tumal)、イビール(Yibir)を含む。
人数:人口の約1%
伝統的な職業:普通は数の多いソマリア人の「高貴」な氏族の「従者」(奴隷)。トゥマルは鍛冶屋、イビールとミディガンは猟師と皮職人。
法律:なし

パキスタン
コミュニティーの名前:ダリット
人数:約200万人。パキスタン北部にあるスワート地方のイスラム教スンニ派にはカーストが存在する。シンド州では、約180万人が奴隷身分で農業労働やレンガ焼きをして生活しているが、大部分がインドから来たダリットである。パンジャブ州にもダリットがいる。
伝統的な職業:掃除人、洗濯人、床屋、動物の内臓を扱う職業。
法律:なし

スリランカ
コミュニティーの名前:ロディー(Rodi)またはロディヤー(Rodiya)(シンハラ族) パッラーズ(Pallars)、ナラバス(Nalavas)、パリヤール(Paraiyars)(タミル族)
人数:不明。両者のカーストの源はインドにあるが、シンハラ族のカーストはヒンズー教の法典ではなく、むしろ社会の封建制度と結びついている。
伝統的な職業:タミル族のカースト制度は門地と職業に基づくものである。パッラーズとナラバス(かつての奴隷の子孫)は支配層のカーストが所有する土地で働く。パリヤールはいわゆるきれいでない職業に就いている。
法律:憲法はカーストに基づく差別を禁じている。

ネパール
コミュニティーの名前:ダリット(約25のサブカーストがある)
人数:約450万人、総人口の21%。
伝統的な職業:死体処理業、廃品回収業、職人、歌手
法律:カースト差別は憲法上、刑罰の対象。

バングラデッシュ
コミュニティーの名前:メソー(Methor)
伝統的な職業:掃除人、トイレ・排水管やその他汚れている場所の清掃業
法律:なし

日本
コミュニティーの名前:部落(以前はえた・ひにん)
人数:約300万人、総人口の2.5%
伝統的な職業:えたは死んだ家畜の処理、皮の生産、警備員、掃除人。ひにんは警備員、死刑執行人、芸人。
法律:あり

インド
コミュニティーの名前:ダリットあるいは指定カーストと呼ばれ、チャマール(Chamars)、アルンチャチューズ(Arunthathiyurs)、パラーズ(Pallars)、バーンギース(Bhangis)、マラス(Malas)、マーディガス(Madigas)などのサブカーストが数多くある。以前はアンタッチャブル(不可触民、不可触賤民)と呼ばれていた。
人数:1億7,900万人(2001年の国勢調査)、総人口の20%。
伝統的な職業:皮職人、靴職人、廃品回収業、掃除人、火葬業者、太鼓奏者、動物の死体処理業者、土地を持たない小作農民。
法律:1948年に制定

 

南アジアのディアスポラ(国外移住者)
 カースト差別は、南アジアからさまざまな土地に移住した人たちによって広まっていった。
 他国で生活するダリットの数を調査した統計データはないが、人々の話から判断すると、外国でも同じカースト出身で固まり、習慣や偏見はそのまま残っているようだ。

 

(1) National Campaign for Dalit Human Rights www.dalits.org
(2) Human Rights and Law Unit of Indian Social Institute, New Delhi
(3) www.imadr.org/project/dalit/atrocity.html
(4) National Campaign for Dalit Human Rights www.dalits.org/globalcastesystems.htm
(5) www.yobserver.com/cgi-bin/yobserver/exec/view.cgi/1/4266
(6) www.idsn.org/pdf/Africa/Niger.pdf

参考:世界民族事典(弘文堂)

 

訳: 松並敦子

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