暴力的な世界 ― その事実

Violent realities - THE FACTS
New Internationalist No.381
August 2005 p18-19

 

殺りくの実態

20世紀の間に戦争と弾圧によって死亡した人々(1)

・大量虐殺と抑圧的な国家権力(意図的に餓死させたケースも含む)によって死亡した人々:8,300万人
・戦争によって死亡した軍人:4,200万人
・戦争によって死亡した民間人:1,900万人
・人為的な要因で飢餓(意図的に餓死させたケースは含まない)が起こり死んだ人々:4,400万人
→合計で1億8,800万人に上り、このうち約9,200万人が共産党政権によって殺され、9,600万人が非共産党政権によって殺された。

戦争と武力衝突の数は、過去10年間で徐々に減少し、1993年の62件が2004年には42件となった。(2) この事実にもかかわらず、戦争と武力衝突の代償は依然として凄惨を極める。

・1994年から2003年の間に起きた大規模な戦闘で1,300万人が死亡したが、このうち900万人以上がサハラ以南のアフリカにおける死者であった。(3)
・20世紀初頭、戦争での犠牲者の割合は民間人1人に対して軍人9人であった。現在この割合は逆転し、軍人1人に対して9人の民間人が犠牲となっている。(4)
・マジョリティーワールド[訳注1]での大規模な国内避難民と死亡者の発生に、欧米メディアが注目しないことも少なくない。国境なき医師団が挙げた最も過小報道された2004年の人道的事件トップ10に、ウガンダ、コンゴ民主共和国、コロンビア、ソマリア、チェチェン共和国における長年の紛争がそれぞれ含まれている。

 

『戦争によって決まるのは、誰が正しいのかではなく、誰が生き残るのかということだけだ』
バートランド・ラッセル (哲学者 1872〜1970)

 

資金の無駄遣い

昨年の世界の軍事費は1兆350億ドルで、このうち47%を米国が占めている。(5) この種の資金が有意義に再配分されれば、貧困が大幅に削減される可能性がある。例えばブラジルは、大規模な飢餓救済プログラムの資金を捻出するため、7億6千万ドル相当のジェット戦闘機の購入を先送りして軍事費を4%カットした。(6) ほかには以下のような可能性がある。

・今後10年間の世界の軍事支出の7.5%(7,600億ドル)をつぎ込めば、2015年までに乳児死亡率を3分の2減少させ、さらに世界中の人々が普通に水を手に入れ初等教育を受けられるようなるだろう。(7)
・アフリカ、アジア、中東、ラテンアメリカの国々が武器購入に充てる資金の半分(110億ドル)を使えば、これらの地域に住むすべての子どもたちが小学校に通えるようになるだろう。(8)
・時代遅れで不要なプログラムを米国の軍事予算から削って節約できる金(510億ドル)があれば、結核、マラリア、エイズといった感染症対策を世界中で行い1,400万人の命を救うことができるだろう。(6)
・トライデントUミサイル6発分の費用(3億5千万ドル)があれば、世界の1千万人の子どもたちに最適な予防接種をすることが可能になるだろう。(9)
・イラクとアフガニスタンの戦闘と占領のために2005年6月までに費やした費用(推定2,300億ドル)があれば、必要としている世界に人々に、最低限の食料、HIV/エイズの治療、子どもの予防接種、清潔な水と衛生設備を供給できるだろう。(9)

 

『製造される銃の1丁、1丁、建造される軍艦の1隻、1隻、発射されるロケットの1発、1発、これらのものが意味するところは……食べる物も無く飢え、着る物も無く凍える人々からの略奪である』
ドワイト・D・アイゼンハワー (第34代米国大統領 1953年)

 

需要と供給

世界最強の政府(世界最大の兵器供給国でもある)は、世界の兵器貿易の管理において最も重い責任を負うべきだ。しかし、世界の通常兵器輸出の88%を占めるのは、国連常任理事国のフランス、ロシア、中国、英国、米国の5カ国である。輸出された武器は、甚だしい人権侵害に毎日のように使用されている。(8,10) 2000年から2004年の間の主な通常兵器供給国上位7カ国のうち、6カ国(ロシア、米国、フランス、ドイツ、英国、カナダ)がG8のメンバーだった。

主な国の軍事費支出(2004年)(5)

順位
国名
支出額
(10億ドル)
人口1人当たりの支出額
(ドル)
世界での
シェア
(%)
1
米国
455.3
1,533
47
2
英国
47.4
798
5
3
フランス
46.2
764
5
4
日本
42.4
332
4
5
中国
[35.4]
[27]
[4]
6
ドイツ
33.9
411
3
7
イタリア
27.8
484
3
8
ロシア
[19.4]
[136]
[2]
13
カナダ
10.6
336
1
15
オーストラリア
10.1
507
0〜1

[ ]は推定値

2000〜2004年の5年間における通常兵器の主要な供給国と受取国

供給国として
受取国として
国名
順位
金額
(百万ドル)
順位
金額
(百万ドル)
米国
2
25,930
12
1,760
英国
5
4,450
4
3,395
フランス
3
6,358
60
204
日本
*
*
23
975
中国
8
1,436
1
11,677
ドイツ
4
4,878
33
575
イタリア
11
1,252
16
1,594
ロシア
1
26,925
*
*
カナダ
7
1,692
14
1,675
オーストリア
23
165
9
2,177
ニュージーランド
54
3
59
204

*参照資料に記載なし

 

利益になる兵器販売(5)

 

2003年の世界(中国を除く)の兵器製造企業トップ100社の兵器の連結売上高は、前年比25%アップの2,360億ドルに達した。これは、歳入が最も低い国々61カ国の国民産出量[訳注:国内総生産GDPとも呼ばれる]の合計にほぼ匹敵する額である。100社のうち38社は米国系企業で、カナダ系企業も1社含まれる。100社の売上高の合計のうち、これら39社だけでほぼその3分の2を占める。

2003年の順位
企業名
国名
収益
(百万ドル)
売上げ全体に占める兵器売上高の割合
(%)
1
ロッキード・マーティン
米国
1,053
78
2
ボーイング
米国
718
48
3
ノースロップ・グラマン
米国
808
87
4
BAEシステムズ
英国
10
77
5
レイセオン
米国
365
85
6
ジェネラル・ダイナミクス
米国
1,004
79
7
タレス
フランス
126
70
8
EADS(欧州航空宇宙防衛株式会社)
欧州
172
24
12
ハリバートン
米国
-820
24
79
CAE
カナダ
46
58
87
テニックス
オーストラリア
*
65

*参照資料に記載なし

 

『武力闘争で勝利を収める唯一のグループは、武器製造業者だ』
ウゴ・チャベス (ベネズエラ大統領)

 

真の大量破壊兵器

小火器により1分間に1人の割合で死者が出ており、その数は毎年50万人を超える。約30万人(大半が民間人)が戦争、クーデター、その他の武力衝突で死亡し、20万人が殺人、自殺、意図していなかった銃撃や警察官による銃撃で命をおとしている。さらに150万人が負傷している。(11)
・武器を用いた暴力で1人が死亡するその1分の間に、15の武器が販売用に製造されている。今日、世界中には6億4千万の小型武器が出回っており、10人当たりに1つの小型武器がある割合になる。その60%近くを民間人が個人的に所有し、その大半が男性である。(11,12)
・世界の殺人の40%が小火器によるものである。(11) 銃で襲われた場合に死亡する確率は、他の武器で襲われたときの12倍以上である。また、被害者は圧倒的に女性が多い。南アフリカでは、女性が18時間に1人の割合で現在または昔のパートナーによって銃で撃ち殺されている。銃が自由に手に入る米国では、殺人発生率が隣国カナダの4倍以上で、半世紀以上この傾向は変わっていない。(13)
・専門家は、小型武器がラテンアメリカ諸国の医療費に及ぼす影響について、GDPの25%というコロンビアを含めたラテンアメリカ全体で、GDPの平均14%に上ると推測している。カナダでは、銃によるけがが毎年約50億ドルもの負担となっている。(14)

 

『小型武器による死亡者数は突出しており、その他さまざまな兵器による死亡者数がかすんでしまうほどだ。その死亡者数は、広島と長崎を壊滅させた原爆の死亡者数を毎年のようにはるかに上回っている。小型武器が大虐殺を引き起こしていることを考えれば、小型武器は“大量破壊兵器”と表現するに実にふさわしいものだと言えるだろう』
コフィ・アナン (国連事務総長 2000年)

 

1 Calculations of people who have died through conflict vary considerably. The following estimates are based on a review of a range of calculations. They are prepared by M White, Historical Atlas of the Twentieth Century, 2001.
2 The Worldwatch Institute, Vital Signs 2005, WW Norton & Co, New York, 2005.
3 The United Nations, The Millennium Development Goals Report 2005, UN, New York, 2005.
4 M Lattimer 'Modern War kills nine civilians for every soldier' in The Independent (Britain), 1 January 2000.
5 Stockholm International Peace Research Institute, SIPRI Yearbook 2005, Oxford University Press, 2005.
6 'The Worldwatch Institute, State of the World 2005, WW Norton & Co, New York, 2005.
7 Calculated from figures used in the World Bank's The Costs of Attaining the Millennium Development Goals, www.worldbank.org.
8 Amnesty International, Oxfam and IANSA (International Action Network on Small Arms), Control Arms Campaign: key facts and figures, Press Release, June 2005.
9 Figures and analysis provided by Frida Berrigan of the World Policy Institute in June 2005.
10 I Khan 'Eliminating the means of violence' in Global Future, First Quarter 2005.
11 Small Arms Survey 2004, Oxford University Press, Oxford, 2004.
12 Amnesty International, Oxfam and IANSA (International Action Network on Small Arms), The impact of guns on women's lives, Alden Press, Oxford, 2005.
13 MB Steger, Judging Nonviolence - the dispute between realists and idealists, Routledge, New York, 2003.
14 Small Arms Working Group, Small Arms and Public Health, One of a number of factsheets produced for the UN Biennial Meeting of States held in July 2003, which can be read at www.iansa.org

訳注1:NIでは、世界の大多数の人々が住む南の国々のことをMajority Worldと表現している。

 

訳: 松並敦子

 

 


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