南の国々の障がい者 ― その事実

Disability in the Majority World - THE FACTS
New Internationalist No.384
November 2005 p12-13

 

障がい者支援の優先順位は総じて低いが、特にマジョリティー・ワールド(世界の過半数の人々が暮らす南の国々のこと)においてこの傾向が著しい。障がい者の現状が把握できるような正確なデータは存在しない。国連などの国際機関は、このような状況の改善を目指している。

 

<実態把握の難しさ>

世界保健機関(WHO)の試算によれば、どの国でも人口の1割程度は何らかの障がいを持つ人々である。
貧困や極端な偏見が重大な結果を招くマジョリティー・ワールドでは、この割合はもっと低い傾向にある。
世界の障がい者の大多数、75%以上もの人々がマジョリティー・ワールドで暮らしている。(1)

<子どもたちの状況>

子どもの死亡率が低い国であっても、障がいを持つ子どもに限れば死亡率は80%近くにもなる。(1)
障がい児の98%は学校に通っていない。また別の見方をすれば、学校に通っていない1億1,500万人の子どものうち、4千万人が障がいを持つ子どもである。(4)
ビタミンA欠乏症により、毎年50万人の子どもが視覚障がいを負っている。
母親が十分にヨウ素を摂取していなかったことが原因で、4,100万人の乳幼児が精神的な障がいの危険にさらされている。(4)

<貧困のわな>

障がい者が貧困層に占める割合は非常に高い。世界銀行は、世界の最貧層に属する人々の20%が障がい者であると推測している。

貧困と障がいには直接的な関係がある。障がいの50%は予防可能なものでなおかつ貧困に起因し、20%は栄養失調が原因である。(1)

障がいの原因
栄養不良
20%
事故/トラウマ/戦争
16%
感染症
11%
先天性疾患
20%
感染症以外の病気
20%
その他(老化も含む)
13%

WHOによれば、マジョリティー・ワールドの視覚障がい児の約7割と聴覚障がい児の約5割近くは、障がいを予防できたか、または治療可能な子どもたちである。(2)
障がい者とその家族は、支援制度の不備や雇用拒否にあって仕事を得られず、より一層貧しい生活へと追い込まれていく。
ケニアでは、16万人の視覚障がい者のうち、雇用されているのはたったの2%である。(3)

<女性と少女>

障がいのある女子の通学率は、障がいのある男子よりも低い。(2)

障がいのない女性よりも障がいのある女性の方が、身体的あるいは性的虐待を受ける可能性が2〜3倍高い。(2)
インドのオリッサ州で実施されたある調査では、障がいのある女性(未成年の少女も含む)は誰もが家庭内で殴られた経験を持ち、知的障がいのある女性の25%が強姦の被害にあい、障がいのある女性の6%が強制的に不妊処置を施されていたという結果が出た。(1)
妊娠や出産の影響で、毎年2千万人の女性が障がい者となっている。(1) その大多数は南の国の人々である。豊かな国では、年間妊産婦死亡率は1%に過ぎない。(7)
女性性器切除が原因で、1億人を超えるアフリカの女性(未成年の少女も含む)が、何らかの障がいを負っている。(2)

<保健医療の格差>

保健医療費の不足は、障がい者支援に打撃となる。

年間の1人当たり保健医療費支出(2002年、単位はドル)(7)
国名
支出合計額
政府負担額
北朝鮮
0.3
0.2
ブルンジ
3
1
イラク
11
2
アフガニスタン
14
6
スーダン
19
4
インドネシア
26
9
カンボジア
32
5
ウクライナ
40
29
エジプト
59
21
中国
63
21
ペルー
93
47
ジャマイカ
180
103
キューバ
197
171
南アフリカ
206
84
ニュージーランド/アオテアロア
1255
978
オーストラリア
1995
1354
英国
2031
1693
カナダ
2222
1552
アイルランド
2255
1695
日本
2476
2022
米国
5274
2368

 

10万人当たりの精神科医の数(8)
低所得国 0.6人   高所得国 9人


てんかん患者5千万人のうち、80%以上がマジョリティー・ワールドに住んでいる。その治療費は、1人当たり年間5ドル程度であるが、アフリカのてんかん患者の80%以上は治療をまったく受けていない。(8)
協調して努力すれば、大きな変化をもたらすことができる。例えば、ポリオの発生件数は1988年に35万件(2)だったが、国際社会はこの年にポリオ撲滅に取り組み、2004年にはわずか1,255件にまで減少した。(9)

<明らかなケアの不足>

マジョリティー・ワールドでは、たった2%の障がい者しか基本的なサービスやリハビリを受けていない。(2)
80%の障がい者は、地域コミュニティーから受けるケアで間に合わせており、専門家にケアを依頼している人はたった20%である。(2)
車いすが必要であるにもかかわらず持っていない人々が世界には2千万人いる。(5) さらに、それよりも多くの人々が、不適切あるいは使い古された器具の使用を余儀なくされている。
マジョリティー・ワールドの視聴覚障がい者の中で、適切な支援を受けている人は0.1%以下である。(6)

こうしたデータでさえも将来の状況をきちんと表しているとは思えないが、WHOは、日々の介護を必要とする人々の劇的な増加を予測する。

国名/地域
介護を毎日必要とする人の増加率予測
(2000年を基準として2050年時点での増加率)(1)
中国
70%
インド 
120%
サハラ以南のアフリカ
257%
ブルキナファソ、コンゴ民主共和国リベリア、ニジェール、ソマリアパレスチナ、ウガンダ
400%を超える

 

訳:松並 敦子

Sources:
1 Philippa Thomas, Disability, Poverty and the Millennium Development Goals, DFID, June 2005.
2 DFID, Disability, Poverty and Development, February 2000.
3 Arne Fritzson and Samuel Kabue, Interpreting Disability, WCC Publications, Geneva, 2004.
4 UNESCO, www.unesco.org/education/efa/know_sharing
/flagship_initiatives/disability_last_version.shtml
5 Motivation, www.motivation.org.uk/_history/index.html
6 Sense International, www.senseinternational.org
7 World Health Organization, World Health Report 2005, WHO, 2005.
8 World Health Organization, World Health Report 2001, WHO, 2001.
9 UNICEF, Progress for Children, No 3, September 2005.

 

 

 


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