都市人口の爆発 ― その事実

Urban Explosion
THE FACTS

New Internationalist No.386
January/February 2006 p18-19

 

これほど多くの人間が都市に住むようになったのは、人類の歴史上初めてのことだ。しかも、都市に住む人々の多くが困難な状況で暮らしている。今回は都市の成長と貧困について見てみよう。

国連ミレニアム開発目標には、スラムに住む1億人の生活環境を2020年までに向上させることも含まれている。しかし今後スラム人口は増え、2020年には現在よりも5億人増加すると推測されている。

巨大都市の成長

非常に貧しいとされる10億人のうち、7億5千万人以上が都市部に暮らしている。
 →NI p18に掲載のグラフ 「巨大都市トップ16」*参照(1)
*ロサンゼルス、メキシコシティ、ニューヨーク、ブエノスアイレス、サンパウロ、ラゴス、カラチ、ムンバイ、デリー、コルカタ(カルカッタ)、ダッカ、ジャカルタ、マニラ首都圏、上海、大阪、東京
*中国の公式資料では、北京や他の都市がトップ16都市に含まれているが、中国以外の複数の独立系の資料には含まれていない。

・南の国々では、今後30年でさらに20億人が都市部に流入するだろう。そうなれば、都市人口は現在の2倍、40億人になる。南の国々の都市人口は現在すでに増加中で、年間7千万人ずつ増えている。全体を見れば、1日におよそ18万人が都市に流入している。ムンバイ(インド)だけでも毎日新たに約300人が農村から都市へやってきている。(2)
・2015年までに人口が1千万人を超えると予想されている23都市のうち、19は南の国の都市である。(3)


都市とスラムの関係

すべてのスクォッターがスラムに住んでいるわけではなく、スラム住人だからといって必ずしもスクォッターというわけでもない。だが、この二者は重なる部分が大きい。
 →NI p18に掲載のグラフ 「地域ごとのスラム人口」参照(1)

・2005年、スラムで暮らす人々は推定で10億人、世界の都市人口のおよそ3分の1であった。(4)
・2030年には、この数字にさらに10億人が加わると見られている。トップ16都市では、スラムに住む人の割合が驚くほど高い。ジャカルタ(インドネシア)では40〜50%の間ぐらいで、ダッカ(バングラデシュ)、コルカタ(旧カルカッタ、インド)、サンパウロ(ブラジル)では3分の1に上る。(5)
・世界のスラム人口の60%はアジアに集中している。アフリカは20%、ラテンアメリカは14%である。(4)

不安定な居住権

都市貧困層にとって最も大きな問題の一つに居住権がある。
 →NI p19に掲載のグラフ 「居住タイプ別割合」参照(2)

毎年何百万人という人々が自分の家から立ち退きを強いられている。
・2000年7月、ポートハーコート(ナイジェリア)のレインボータワーでは、100万人近くの人々が強制立ち退きに遭った。(6)
・2004年初め、デリー(インド)で約15万人、コルカタで約7万7千人が立ち退きに遭った。(6)
・北京では、2008年に開催されるオリンピックの準備のため、30万人が家を失った。(6)
・2003〜2004年にかけて、ジャカルタでは10万人以上が立ち退きにあったが、強迫を受けて立ち退いた人々もいた。(6)
・都市貧困対策としては、スラムの撤去と移転を行うよりも、スラムを移転せずにそこで環境を改善した方が費用を10分の1に抑えられる。(4)

スクォッター(不法居住者)

貧しい人々が都市に住むには、スクォッターは最も手ごろで安上がりな方法の一つである。

・ラテンアメリカでは、公式な住宅セクターによって建設された住居は30%に満たない。
・カラカス(ベネズエラ)では、過去50年間に国が100万戸、民間で200万戸の住居を建設したが、都市部住民は自らの手で300万戸を建設した。(7)
・20年間でムンバイの人口は倍になったが、スクォッターの人数は12倍以上になった。(8)
・フィリピンの首都マニラのスクォッターで行った調査によれば、現在の非常に貧しい生活でも恵まれていると答えた人の割合はたった10%にすぎない。しかし彼らは、それでも農村にいたときに比べれば10倍恵まれていると答えている。(9)
・サハラ以南のアフリカ諸国では、全世帯の70%が住宅ローンを利用する余裕がないと見られる。(4)

ぎりぎりの生活

貧しい人々は住環境の良くない地域に住んでいるが、その代償も払っている。

・20世紀を通して、地震によって1億軒以上の家が破壊されたが、そのほとんどは都市部の貧しい地域と貧しい農村部の村であった。(10)
・ナイロビ(ケニア)にある貧しい居住区キベラでは、人々はまわりにある裕福な地域(水道メーターがついた市の水道システムが整備されている)よりも10倍高い水道料金を支払っている。水不足の時には、この料金は公式料金の30〜40倍へと跳ね上がる。(3)
・インド最大の都市ムンバイでは、2万家族が路上で生活している。ムンバイの汚染された大気を吸い込むことは、たばこを1日に2.5箱吸うのに相当する。(8)
・その困難な生活環境にもかかわらず、ブラジルのファベーラ[訳注:ブラジルのスラムのこと]の人々が麻薬取引にかかわっている割合は1%ほどである。(3)

病気とサービス(11)

基本的なサービスを提供することにより、貧しい地区での生活レベルは大幅に向上する。

・ナイロビのスラムのトイレの数は、500人に1つである。世界では、推定で1億人が「包んで捨てる」方法で用を足さなければならない。

 

訳: 諸 英樹


1 Global Urban Observatory, UN Habitat, Nairobi, 2003.
2 The Challenge of Slums, UN Habitat, Nairobi, 2003.
3 Robert Neuwirth, Shadow Cities, Routledge, New York, 2005.
4 Financing Urban Shelter, UN Habitat, 12 November 2005, Nairobi.
5 Water and Poverty, Asian Development Bank, Water and Poverty Report, May 2002.
6 ‘Forced Evictions Worldwide’, Environment and Urbanization, April 2005.
7 Sabine Britner and Helmut Weber, Caracas, Hecho en Venezuela, Revolver, Frankfurt, 2005.
8 ‘Towards a pro-poor framework for slum upgrading’, Environment and Urbanization, April 2005.
9 Peter Wilsher and Rosemary Righter, The Exploding Cities, Quadrangle Books, New York, 1975.
10 Mike Davis, ‘Ecology against Capitalism’, Socialist Review, July 2005.
11 Water and Sanitation Report, UN Habitat, Nairobi, 2003.



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