パンクロック資本主義?

Punk rock capitalism?
New Internationalist No.395
November 2006 p16-17

 

アイルランドのロックバンド、U2のボノが考案したエイズ対策資金を大企業から集める方法は、見事だ(inspiRED) といえるのか、それとも無分別な(illconsideRED)ものなのか? ジェス・ワースが、タムジン・スミス(Head of Product Red)とシェイラ・ロッシュ(Red Director of Global Communications)にインタビューを行った。

プロダクトREDは、「世界でも有名なブランドの集まりである」(アメリカン・エキスプレス、ギャップ、コンバース/ナイキ、モトローラ、アルマーニ)。これらの企業は特別な「RED」プロダクトを製造・販売し、その利益の一部が世界基金(1)に寄付されてアフリカでのエイズ対策に使われる。昨年春に英国で始まり、MySpace.comや『インディペンデント』紙から、スカーレット・ヨハンソン、クラウディア・シファー、シザー・シスターズといったセレブまでもが支援している。現在は北米でもプロモーションが行われている。

 

ジェス:「REDの革命」に加わるよう人々に広告で訴えていますが、REDの商品を買うことがなぜ革命的だと言えるのでしょうか?

タムジン:私たちは「パンクロック資本主義」という言葉で表しています。ワシントンやロンドンをデモ行進したいと思う人もいれば、それほど積極的に政治にはかかわらないという人もいます。REDは、利益の一部を大きな社会変化のために投入するよう大企業に働きかけるので、まさに革命的な取り組みへの極めて即効性が高く力強いやり方を提案しています。
 私たちから見れば、アメリカン・エキスプレス・カード(2)の裏側に「アフリカのエイズ撲滅のために企画されました」と書かれていることは素晴らしいことだし、これは非常に革命的なコンセプトです。革命は、いつの間にか起こりいつしか終わるものですが、私たちは反乱行為を進めていきたいのです。それは進化していくもので、人々の間にも広まっていき、ショッピング文化に根付くことが可能なものなのです。
シェイラ:最終的には、どんなタイプの消費者もREDプロダクトを買うようになることを願っています。消費者は実に素晴らしい商品を買え、それによって非常に大きな影響を及ぼすのです。

ジェス:パンクロックは、既存の体制と資本主義への反抗として生まれたものではなかったのでしょうか?

タムジン:相反する意味を含んだ多くの言葉と同様に、その矛盾には皮肉が込められています。私たちがパンクロックという言葉を使うのは、単に変化を意味しているだけではありません。変化が必ず起きるということも含まれているのです。それがエイズ対策への資金提供という直接的な動きです。この実際の資金提供と行動志向が、この取り組みをパンクロックと言わしめるものなのです。私たちは、資本主義が持つ力と、資本主義に含まれる人間の本質への直接的な結び付きを利用し、それを善いことへと向けているのです。
シェイラ:それは罪人が天使になる方法です。お金は使いますが、そのことに良い気分を覚えます。REDはかっこよくセクシーなのです。他人への同情を感じることなのですから、REDは単なる買い物とは違います。

ジェス:では、それは慈善行為になるのですか? しかし、企業は依然としてREDで利益を上げていますが?

シェイラ:それはREDが生き残っていく唯一の方法です。REDは三者が得をする仕組みになっています。企業には大きなメリットとなり利益を上げることもできます。消費者はとても素晴らしい商品を手にすることができ、それによって新たな負担なしに非常に効果的なことが行えるのです。そして、最終的に恩恵を受けるのはアフリカにいる人々です。彼らは抗レトロウイルス薬[訳注1]の投与を受けられるようになり、自らの命を「延ばす」ことができます。

ジェス:ビジネスが慈善行為に貢献する唯一の方法とは、より大きな売り上げを上げることだと思いますか?

シェイラ:お金のことだけでなく、社会貢献をアピールすることも必要です。

ジェス:商品は倫理的であるべきでしょうか? また、企業ははっきりとした倫理的な基準を持つべきでしょうか?

シェイラ:私たちが選んだブランドはシンボル的なブランドです。私たちには指針となる原則があります。パートナー企業にはそれを守るようお願いし、それを促しています。企業の倫理的な活動を分析して認定する組織は世の中にたくさんあります。私たちはそのようなことを入念に調べる組織体制にはなっていませんが、REDに参加するからには、企業は基本的に会社の信用を賭けています。なぜなら、企業が何のために取り組むのかが非常に目立つので、かなり鋭い視線にさらされるからです。それが規制という役割を果たす仕組みになると私たちは考えています。

ジェス:世界での消費全体を見てみれば、そこにはまさに大きな問題があることは明らかです。つまり、欧米に住む私たちの消費が生態系の限界を超えており、その消費を大幅に減らす必要があるということです。REDの仕組みは、消費の増加なしには成り立たないわけですが、このような現状とはどう折り合いをつけていくのでしょうか?

シェイラ:私たちは企業に対して、アフリカとの貿易を行うよう実際に働きかけています。ギャップは、多大な努力を払ってREDプロダクトの一部をレソトで生産するようになりました。そして、服を作っている工場で、労働者に対してHIV/エイズの検査と治療をするという新たなプログラムも始めました。アルマーニは、アフリカ人のデザイナーを起用しています。
タムジン:モトローラの梱包材はサハラ以南のアフリカから来ています。また、そこに生産拠点を作ることも検討中です。レソトの工場でギャップのTシャツを作っている労働者が受ける恩恵は、抗レトロウイルス薬投与のプログラムだけではありません。その人たちが仕事をしているからこそ支援の対象にもなるのです。これは非常に勇気づけられるコンセプトです。消費者がこのような事情を知るようになれば、どこでどのようにして商品が作られているのかということをもっと気にかけるようになるでしょう。人々により良い選択肢を提供すれば、衝動買いのようなことをやめるだけでなく、買う量についても恐らくもっと慎重になるでしょう。

ジェス:REDは、単なる商品の購入に加え、何らかの政治的な行動を積極的に促すことはあるのでしょうか?

タムジン:そう思います。つまり、ボノはこんなことも言っていました。REDは潜在的に、「One」キャンペーン(3)への「ゲートウェイ・ドラッグ」[訳注:より強い薬にのめり込む前の弱い薬]となる可能性があると。それは、政治家に手紙を書いている暇もないような人たちにとっては非常にシンプルな解決策です。そんな人たちは、「おー、これは面白そうだ。私にもできるな。商品を買えば、なんと企業は利益の50%を世界基金に寄付してくれるのか。これは実に素晴らしい買い物だ」というように感じるでしょう。REDが政治的になる必要はないと私は思います。しかし、現在行われている政治的な活動を側面から支援できることは確かです。
シェイラ:私たちは、人々にアピールできる部分で取り組もうと試みています。それが何かといえば、買い物なのです。

 

(1) 正式名称は「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」で、2001年にG8諸国によって創設された。これらの三つの疾病によって危機的な状況が世界中で見られるにもかかわらず、創設以来この基金に対する各国政府の資金援助は不十分である。www.theglobalfund.org(英語)  www.jcie.or.jp/fgfj/top.html(日本語)
(2) REDアメリカン・エキスプレス・カードの利用額の1%が世界基金に寄付される。他の企業は利益に対する寄付の割合を明らかにしていない。
(3) 英国で始まった「貧困を過去のものにする Make Poverty History」キャンペーンの米国版(www.one.org)。日本では「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンとして行われている(www.hottokenai.jp)。

訳注1:ウイルスの増殖過程を阻害する薬。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の増殖を抑えてエイズ発症を遅らせることができ、感染者の生活の質の向上が図れる。

 

 

<「侮辱的で失礼で人々を惑わせる話だ」〜RED革命への批判>

「立派なことに、REDは世界基金に資金を提供するために存在するように見える。しかし、そのマーケティング手法を見てみると、そんな理由はほとんど後から取って付けたようなものだ。『あなたが世界を救うのだ!』 そんな言い方は、世界基金自体をあまり気にかけない姿勢を示している。世界基金の取り組みは取るに足らないことのように思えるし、それが一体どのような仕組みになっているのかなどほとんどの人は知らない。慈善活動など実はどうでもよいと言っているようなものだ。その代わりに、『自分に良いことで他人を助ける』というマーケティングのメッセージが消費者の良心に届き、欧米の罪をぬぐい去るように働く。しかし、それはエイズ流行に真の解決策をもたらすものではない。REDは、消費によって罪の許しを与えているようなものだ。問題についてもっと先を見越して伝えていかない限り、それは単なるマーケティング手法の一つに過ぎず、エイズ対策よりも企業イメージと売り上げにより大きく貢献するだろう」
Esther Lim(研究者)

「豊かな白人が貧しいアフリカ人の命を「救っている」という考え方は、革命的な概念などではない。それは侮辱的で失礼で人々を惑わせる話だ。この世界の仕組みがそうなっているという見方と、それでもOKだという考えを揺るぎないものにしてしまう。倫理的な観点で考えれば、REDは規制メカニズムとは対極にある。そのコストは企業のPR予算でまかなわれることは間違いないだろうし、宣伝としてプラスの印象をかなり広めることができ、その結果として売り上げがついてくる。企業は世界の労働者の待遇を改善する必要もない。企業が行っていることは、アフリカの貧困とエイズの流行をもたらしているまさにそのシステムを維持する手助けである。ビジネス界は、利益からいくらかの分け前を回すというようなこと以上のかかわりが必要だが、プロダクトREDはそのようなかかわり方を提案するものではない。資金集めはありがたいが、REDのうわべだけの言葉(ぞっとするような単純化、神妙な態度、黒人の状況を理解しているといったような姿勢)は歓迎されない。主張が仰々しく、政治的なメッセージが完全に欠落しており、プロダクトREDが前向きな影響力となる可能性を私は思い描くことができない」
Will Horwitz(学生・エイズ活動家)

 



 


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