人身売買を食い止めろ!
(抜粋)
Stop Traffick!
New Internationalist No.404
September 2007 p17-20

人身売買に立ち向かう、革新的、独創的、そしてひと味違う世界の取り組みを紹介する。


ポスターキャンペーン
多くの人々が人身売買の被害に遭っているウクライナ、ブルガリア、ルーマニアの街角に、印象深いポスターが現れた。それは、人身売買とは縁がなさそうで最も信頼が置けるような人々(学生時代の旧友、ボーイフレンド、親しい親戚など)が、トラフィッカー(人身売買業者)になっている可能性があるということを警告している。

2006年コスタリカでは、性的搾取を目的とした子どもと若者の人身売買を防ぐために、Paniamor Foundation(ECPATネットワークに所属している)という団体がマルチメディアを利用した社会への啓発活動を行った。そのスローガンは、「だまされるな! 紹介すると約束された仕事の先に待っているのは、苦痛という名の目的地なのかもしれない」であった。ポスター、バスの車体、子どもに発行されるパスポートに挟み込まれるチラシには、紙幣がえさとして置かれたネズミ捕りの絵など、さまざまなイメージが描かれている。
ECPAT www.ecpat.net
Fundacion Paniamor www.paniamor.or.cr


機先を制する
トラフィッカーは、最も弱い立場の人々から獲物を選び搾取するすべに長けている。従ってキャンペーン活動家たちは、まずはそのような弱い立場にいる人々に注意を促す必要がある。ブルガリアは、人身売買されてドイツに連れてこられる女性と子どもの主要な送り出し国となっている。養護施設で思春期を過ごした人々は、特に被害に遭うリスクが高い。そのほとんどがロマ民族[訳注:ジプシーと呼ばれていた人々]であり、彼らはその民族と孤児という2つの境遇による二重差別にさらされている。Bulgarian Animus Association (La Stradaネットワークに所属している)は、養護施設の子どもたちが搾取の犠牲とならないための知識と技能を教える活動を行っている。

ネパールでは、出稼ぎの影響を最も受けている厳しい貧困にあえぐ遠隔地の人々に対してコミュニティー・ラジオ・プログラムが実施され、トラフィッカーの手口に警戒するよう呼びかけが行われている。
La Strada www.lastradainternational.org


帰国後に備える
人身売買の被害に遭った後、サバイバー[訳注:人身売買の被害に遭い、救出されたまたは自ら脱出してきた人]たちが母国に戻ることが非常に難しい場合がある。人身売買の経験がトラウマとして心に残りやすいということもあるが、自分のコミュニティーから拒絶されたり、トラフィッカーからの脅しを受けたりするという理由もある。ナイジェリアのベニンシティでは、Committee for the Support of Dignity of Women(COSUDOW)が他のNGOと連携しながら、イタリア、スペイン、ドイツなどヨーロッパから帰国したサバイバーたちの社会復帰支援活動を行っている。その支援では、まずはサバイバーの家族を探して帰国に備える。家族がサバイバーを受け入れ、社会復帰を試みる間の支えとなっていけるようにするには、ほとんどの場合家族へのカウンセリングが必要である。また、「投資」の返済を求めてくるかもしれないトラフィッカーから家族を守る必要もある。COSUDOWは、ナイジェリア警察の人身売買対策ユニットに協力を依頼している。さらに、織物、染色、縫製、編み物、パン作りのトレーニングと職業紹介を行っている。人身売買に遭った女性の多くが母子家庭出身であるため、COSUDOWは予防措置として45人のシングルマザーの生活支援を行っている。また、貧しい少女の高校の学費を支援する特別基金の運営のほか、多くの女性が人身売買の被害に遭っている遠隔地の貧しいエド州では、秘書業務のトレーニングを行うセンターを運営している。
COSUDOW www.humantrafficking.org


パワーシフト
タイの団体Empowerは、実施するプログラムのさまざまな面でセックスワーカー[訳注:性的なサービスの提供を仕事とする人]の意見を聞き、セックスワーカーが平等なパートナーとして参加することをしっかりと進めている。議論を呼ぶところではあるが、ぽん引きや売春宿オーナーに対してもしばしば協力を求める。バンコク、チェンマイ、メーサイのリスクが高い地域における活動では、人身売買された女性たち、そして自分の意志で働く女性たちとも協力する。Empowerは、彼女たちがその仕事に関して正しい情報を伝えられた上で判断を下した場合には、その選択の権利を尊重する。ノンフォーマル教育[訳注:学校制度という枠組み外での教育活動]、識字クラス、カウンセリング、保健サービスは、国籍を問わず必要な人々に対して行われている。
Empower www.nswp.org


摘発へとつなげる取り組み
人身売買が告発される例はいまだにそう多くはない。取り締まり当局者は、自分たちで把握しているのはその10%あまりだろうと推測している。イスラエルの女性グループIsha L’Isha(女性から女性へ)は、人身売買に無関心な警察がより懸命にトラフィッカーを追及し、人身売買被害者の女性の扱いももっと適切にするよう変化を促すための試みを行い、そこそこの成功を収めた。Isha L’Ishaは、ヘルプライン、シェルター(一時避難場所)の提供、保健医療、カウンセリング、母国への安全な帰国のための支援など、人身売買被害者への支援活動では主要な役割を果たしている。ぽん引きや売春宿オーナーを追及するための証言を望む女性に対しては、法的な支援と援助を行う。トラフィッカーの厳罰化を求めるキャンペーンも実を結んだ。

警察による売春宿、サウナ、マッサージパーラーの強制捜査は、当局が断固たる措置をとっているような印象をほとんどの国で与えている。しかし強制捜査は、支援団体が人身売買の被害者に必要な支援を行えるようなやり方で実行される必要がある。2006年英国では、Operation Pentameterと呼ばれるセックス・トラフィッキングに対する初めての全国規模での共同活動が3カ月間行われた。人身売買の被害者と見られる14歳から17歳の少女を含む84人の被害者が救出され、130人が起訴された。その多くがすでに裁判を経て判決が下されている。この活動によって生み出された成果のひとつが、シェフィールドに設立された英国人身売買センターで、そこでは人身売買対策活動の情報収集と調整が行われている。

人身売買情報ホットラインが効果を挙げている。トルコでは、IOM(国際移住機関)に電話をしてくる人の74%が男性で、そのほとんどは客として売春宿へ行った人々である。2006年トルコ警察は、国内の10の人身売買ネットワークを壊滅させた。南米のアンデス地方では、1カ月に1,000人あまりがIOMのホットラインに電話をかけてきた。2006年ペルーでは、電話による通報のおかげで6カ月で30人のトラフィッカーを告発した。「私の夢がかないました」と言うのは、ピウラの売春宿に若い娘が監禁されていた母親で、「私の娘がようやく帰ってきたのです」と語った。
Isha L’Isha www.isha.org
UK Human Trafficking Centre www.ukhtc.org



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