企業をめぐる激論:
改革か、それとも革命か?
The big debate:
reform or revolution?

New Internationalist No.407
December 2007
p14-16


英国の持続可能な開発委員会の委員長を務め、英国政府にアドバイスを行う主要アドバイザーのひとりであるジョナサン・ポリット(JP)。彼は、企業がもっと社会的・環境的な責任を果たすようにするため、企業に協力しながら変化に導いていくという方法で取り組んできた。彼はこのやり方の草分け的存在でもある。変化に関する彼の考え方は、近著『Capitalism as if the World Matters』に述べられている。

クレア・フォーセット(CF)がかかわっているのは現在広がりつつある運動で、企業に対抗するための直接行動について、一般の人々の間で議論していこうというものである。この運動にかかわる人々は、企業は公正で低炭素な社会という未来に対して立ちはだかる障害物であると考えている。先日彼女は、Corporate Watch UKのサイトにて『What’s Wrong with Corporate Social Responsibility?』という論文を発表した。

今回NIでは、この2人が火花を散らす討論の模様を掲載する。

JP:あなたは論文の中で、世界を変えるような行動を企業が自発的に行うことはまったく考えられず、規制だけが企業を変える唯一の方法であり、常にどんなことがあっても株主利益を優先に考える性質を持つ企業というものは、最低限の取り組みしか行わず、他のステークホルダー[訳注1]のことを優先的に考えることはまったくもって絶対にないと書いていますね。しかし、実際の例を見てみると、あなたの考え方とは大きく異なっていると思います。
 あなたが取り上げているのは本当に悪い面ばかりで、企業を悪魔か何かのように扱っている気がします。しかしあなたの主張を突っ込んで考えてみれば、実は企業で働く従業員を悪者扱いしていることになるんですよ。私は15年間企業に協力しながら仕事をしてきましが、その経験を通して分かったことは、企業の従業員はさまざまな問題について力を注いで注意を払っているということです。また、もしも企業が問題に対応していけば、非常に大きな貢献になると彼らが信じていることにも気づきました。

CF:CSR(企業の社会的責任)が意図しているところは、最低限の取り組みで済まそうということで、規制回避をもくろんでいるのは極めて明らかです。CSRが主張する世界を変えていくための最善の方法とは、消費者として商品を購入するという投票行為を行うことであるというもので、これで人々を納得させようとしているのです。この考え方は、民主主義とは根本的に逆の方向を向いており、人々の力を奪うものなのです。

JP:そのような考え方は、ほとんどの人々を見下すような態度につながる危険な考え方だと思いませんか? これまで人々は、そのような受け身の消費者という地位に甘んじてきてはいないと私は思います。そのような地位に甘んじるというのは、無関心、無知、不十分な洞察が原因だと思います。確かに、規制を避けるためにCSRに取り組む企業もあります。しかし、規制強化を歓迎する企業もあるのです。ただその理由は、恐らくあなたが望んでいるようなものではないのかもしれませんね。規制を歓迎する企業は、秩序を乱す者たちを締め出し、まじめにやっている企業がばかを見ないようにすることを望んでいるのです。

CF:企業が望む規制とは、企業利益に一番かなった類のものです。彼らが求めているのは、市場を基本とした仕組みで……

JP:それはまた別の話です。市場を基本とした仕組みでも、きちんとした規制機能を持たせることはできます。それに、それは政府が導入するものなので、ほかの規制と同様に正当なものです。私はそこに違いがあるとは思いません。

CF:根本的な問題は、市場で最も恩恵を受けられるのは、富を蓄積している者たちであるということです。炭素取引で考えてみれば、たくさんの資金を投入できる者ほど、より多くの炭素を排出できるわけです。そこには正義や公平性の原則もありません。

JP:それは、市場にどんな仕組みを導入するのかによりますね。政府がその仕組みをまさにつくるわけですから、富裕層よりも貧困層への悪影響を少なくするような仕組みをつくることも実際は可能なわけです。もしも政府がそうしたいと考えればの話ですがね!

CF:まさにその通り! 私は、政府と企業は大違いだと言っているわけではないのです……。

JP:この議論もいよいよ面白くなってきました!でも、そんなことをあなたが言ってもいいのですか(笑)。

CF:私が言いたかったいのは、どちらもネオリベラルな自由市場というイデオロギーをあがめていて、基本的には同じだということです。

JP:このことではあなたの意見に賛成ということにして、あなたも私もこの部分に関しては完全に同意できるかと思います。そのような企業イデオロギーに、世界各国の政府がどれほどとりつかれているのかということを考えると、私はぞっとします。それは、政府の責任の放棄で、恥ずべきことです……。

CF:本当にそう思います。しかし、政府や企業と一緒になって行う改革という取り組みでは、その状況を変えていくことはできません。社会変革は、議会で何かを決めたからといって起こるものではありません。現在の権力構造に対して支援を行うのではなく、権力を人々に移譲するプロセスが必要なのです。

JP:しかし、政府や政治家は二度と信用できないという心理状態に陥ってしまったら、私たちは行き詰まってしまいます。そうなったら私たちはどうすればいいのでしょうか? 一般の人々だけで社会変革ができるのですか?

CF:そうですねえ、私はできると思います! 企業や政府の内側で取り組む人々が増えても、そこからは変革は起こらないでしょう。最も効果的なのは、外側にいる一般の人々に語りかけ、企業と政府に対する疑念を高めて怒りを引き出し、行動を起こしたいと感じるようにすることです。

JP:最も効果的なのは、その両方の手段をとることでしょうね。そうすれば、政府と経済界を挟み撃ちにするような効果があるでしょう。

CF:でも、内側で取り組む人は多く……

JP:ええ、現在は多くの人々が取り組んでいますよ。これまでにはなかったことです。それを忘れてはいけません。

CF:しかしそれもまた問題のひとつなのです。本当に真剣で熱意を持った人々が持続可能な開発を学び企業に就職しますが、歯車のひとつとして組み込まれてしまいます。資本主義は、公共の財産である才能ある人々を自らのプロジェクトのために取り込むのです。これが、現在環境保護運動の世界で起きていることなのです。

JP:環境保護に取り組むNGO、例えば、FoEやグリーンピースは完全に取り込まれてしまっていると思いますか?

CF:かなり取り込まれていますね。CSRは、彼らを街角での活動や急進的なグループとの協力関係から引き離し、企業と親しい関係に持ってくるという意味では非常にうまく機能しました。またCSRは、理想主義者の彼らに対して現実主義を吹き込みました。つまり、実現可能な変化というものは、現状の上に徐々に積み上げていくものであり、ビジネスモデルを根底から覆すことではないと、こう言いながら丸め込んだのです。これは内側にいる人々の裏切りであると、外側にいる多くの人々は感じていると私は思います。

JP:あなたの主張は白黒はっきりとしていますね。私が常々言っていることですが、直接的な企業への関与は、変化を目指す運動の基本的な部分です。私たちは、今まで以上にそうやってかかわって取り組んでいく必要があり、手をゆるめるべきではありません。しかしあなたは、私の取り組みの重点を変えるべきだと言っているように聞こえます。私はしばしば裏切り者という批判を受けますが、私は私が有効だと思う取り組み方をしているのです。

CF:しかし、私たちは企業の正当性を崩そうと活動しているのに、あなたは企業の正当性を強化していると思いませんか?

JP:私は、企業の正当性を崩したいとは思いません。私たちが企業に求めなければならないことは、富を生み出す者たちが法律を守り、政府や消費者などと適切な関係を保つということなのです。私は、政府が企業に正当性を与えるプロセスを改革したいのです。

CF:企業に正当性を与えているのは政府ではありません。一般の人々です。

JP:ええ、私たちは買い物を通して企業に正当性を与えていますね。しかし私たちは選挙によって、理論的には経済の仕組みを規制する力を政府に授けています。ただその力はものすごく間違った方向に使われてしまいましたが、政府はその責任をまったくとっていないのです。

CF:あなたは企業は富を生み出していると考えているようですが、企業は富をため込んでいるのではないですか?

JP:うーん、両方ですね。

CF:富は社会の中、つまり地球上に存在しているものです。人間のニーズに合った物とサービスの分配をするのは(それをするにしても利益追求という動機が必要な)資本主義だけであると決めてかかることは、他の考え方を無視し、利用できる仕組みがほかには存在しないという立場をとることになります。

JP:それでは、物とサービスの分配を行うために市場は不要だというのですか?

CF:人々のニーズに適しているのは、市場よりももっと平等主義的な方法で、協同組合的なシステムをより良くしたものがふさわしいのではないかと思います。私たちの社会の仕組みがどうあるべきかという原理原則について、私たちはもっとエネルギーを費やして検討していく必要があると思います。メディアやCSRから強く発せられる考え方は、企業はあなたの価値観と原則をしっかりと理解しているので、あなたは社会の仕組みについて考える必要はありません、といったものです。これは、人々に力を移譲して力を与えていくという努力に本当に水を差す行為なのです。

JP:あなたは、企業がある程度の政治意識を持っているように言っていますが、それは私の理解とはだいぶ違います。資本主義に関して企業と話すことは非常に困難です。企業は、政治的なことがどうとか考えているわけでもなく、特に意識もせずに振る舞っているのです。

CF:まあ、私も陰謀が渦巻いているなどとは考えていませんよ!

JP:いや、もしかしたらそうなのかもしれません!(笑)

CF:しかし、その企業のやり方は、徐々に進化している戦略のひとつなのです。石油大手のシェルは、CSRが非常に効果的な手法であることに気づきました。そして、他の企業もそれを採用するようになりました。シェルとMcLibel[訳注:マクドナルドが英国で訴えた活動家の裁判の俗称]を考えてみましょう。マクドナルドは、ランダムに選んだ数人の人々を、彼らの作ったパンフレットの内容に関して訴え、それは英国史上最長の裁判となりました。シェルの方はといえば、「みなさんのかかわりを歓迎します」「あなたの声が聞きたい」「私たちに対するご意見を何なりとお寄せください」など百万ポンドをかけたPRキャンペーンを行いました。どちらのやり方がより大きな成功を収めたでしょうか、分かりますよね? CSRはこうやって発展してきたのです。誰かが机の前でプロジェクトをすべて考えてきたのではないと思います。まあその役割は、PR会社の人たちが担ったのかもしれないですがね!(笑)

JP:分かりました。あなたの説明には従うしかないようですが、ではこういう質問はどうでしょうか。大手食品会社のネスレに対抗しているさまざまなキャンペーン(私は実際、非常に効果的な活動だと思っています)すべてが強い影響を及ぼし、ネスレが方針を180度転換して母乳代用品の販売をやめたとしましょう。[訳注2] そうなったら、あなたはそれで満足なのですか? それとも、多国籍企業の存在自体を単に認めたくないという理由から、ネスレは解散するべきだと思いますか?

CF:多国籍企業が、富と権力を手にするために存在するというのであれば、答えはノーです。公正な世界に彼らの居場所はありません。現在の世界の構造が問題であり、私たちは物事を構成するためのオルタナティブなやり方を考える必要があるのです。

JP:どの調査を見ても、紛れもなく人々はスウェットショップ[訳注3]のことを気にかけ、もしも自分が買ったものが世界のどこかの国で人々を搾取して作られたものだったらどうしようかと心配しています。このことはつまり、人々が衣類を買う方法を変えるということを意味するのでしょうか? まあほんの少しはあるでしょう。では、人々が欧米の衣料品産業の構造を再構成したいと考えていることを示すものなのでしょうか? いいえ、そんなことはありませんよ!

CF:人々の消費者としての行動と市民としての行動は異なるものなのです。しかし気候変動は、決定的な転換点です。私たちは正しい行動をとらなければならない、そうでなければ行き詰まってしまうというところに来ているのです。問題解決のためには、本当にたくさんの人々を、ただ単に現在の構造に当てはまるよう適応させるのではなく、扇動するようなことが必要になってきます。

JP:難しいのは、積極的に先回りして対応するように政府を説得することです。英国政府の言っていることを考えてみると、問題の所在に関する整然とした理解と、痛ましいほどに不十分な政策決定プロセスとの間には大きな溝があることが分かります。
 それではあなたにお聞きしたいのですが、企業の取り組みである「ビジネス環境プログラム」には、14の企業の役員から成る「企業リーダーグループ」があります。これまで2年以上もの間、このグループは政府にロビー活動を行い、彼らの企業が気候変動に関してより良い仕事ができるよう規制強化を求めて働きかけてきました。大手企業の中でこのような働きかけをしているのを聞いたのはこれが初めてでした。彼らは、市場の創出や市場システムの整備という政府本来の仕事に失敗しているではないかと政府に対して言ったのです。それは、富を生み出す者たち、私は、地球にとっての有害な寄生虫と呼ぶ代わりにこう呼ばせてもらいますが……

CF:富を蓄積している者たちです!

JP:(笑)……そうですね。それは、ビジネスがこの惑星にとってもっと良い仕事に手をつけてうまくやっていけるようにという意図からなのです。でもあなたはたぶん、そんなことは何の役にも立たない価値のない取り組みだと考えるのでしょうね。

CF:私はそれは知りませんが、そんな気はしますね。なぜかと言えば、結局企業はどうやっても利他的に行動することはできないのです。企業は、自らの利益が最大になるような行動をとりますが、それが社会の利害と一致するようなことがあるとは思えません。

JP:でも、最終的には一致しなければだめでしょう。

CF:なぜですか?

JP:それは、企業のステークホルダーの間には、株主であろうと社会であろうと違いはないからです。結局は、企業も破たんしてしまった社会では活動することはできません。彼らもカネもうけをできないわけです!

CF:企業は、安定している社会と言っても、抑圧的で、不公正で、持続不可能な中で安定している場合でも活動はできますね。

JP:一時的にはそうでしょう。しかし、それは長続きしないでしょう。社会の関心と企業の関心が、結局は重なり合うようにならなければまったくだめなのです。旅行のためには、石油会社、電車やバス会社、航空会社などを許容しなければなりません。誰にも企業の活動を止める力はありません。なぜなら、人々は企業の商品を買いたいと思っているからです。人々は自動車を運転してガソリンを消費していますが、その運転で排出される炭素の責任は誰にあるのでしょうか? 私は、それが石油会社の責任であるとは思いません。自動車を所有し、運転し、ガソリンスタンドで給油する人の責任だと思います。二酸化炭素の排出量の大幅な削減は、企業にとっては新しい課題です。私たちは、企業のやり方にただ従っていくことはできません! その点では、BPとシェルという石油大手が始めた代替エネルギーという新しい取り組みには関心を持っています。

CF:企業があてにしていることのひとつが特許です。その特許とは、社会の未来を形づくるための基礎にも通ずるものなので、彼らはエネルギー供給の仕組みを牛耳ることになるでしょう。

JP:するとそれは問題なのですか?

CF:そうなのです! つまり私たちの未来は、現在の企業の手に握られているのです。

JP:しかし、ほかに誰が研究開発をしてくれるというのですか? 政府が最先端の技術開発に資金を出してくれなければ、大企業の研究開発に頼る以外にないでしょう。

CF:と言っても企業は、将来消費が増加する見通しを持ち、その増加をあてにしています。それは持続可能なやり方ではありません。現在の消費レベルを保っていくための再生可能エネルギーではないのです。

JP:では、環境にダメージをもたらすことなく、現在の消費レベルで90億人を養っていくことができる再生可能エネルギーが実現したらどうですか?

CF:その時は食料と水がなくなってしまうでしょう。地球上のあらゆるところで、私たちは成長の限界点に突き当たっているのですよ! それは、資本主義が抱える根本的な問題のひとつです。資本主義は、あらゆる資源の消費が増加することを前提にしています。森林や漁場、そしてあらゆる再生可能な資源も枯渇しつつあるのです。それは、単に二酸化炭素の問題ではありません。

JP:これ以上あなたの意見に同意することは難しいですね。ちょうどいい、議論はここまでにしておきましょう!


ここに掲載した文章は、実際に行われた会話の一部です。完全版(英語)は、NI UKのウェブサイトに掲載しています。

参考:
www.forumforthefuture.org.uk
www.corporatewatch.org
www.sd-commission.org.uk
www.climatecamp.org.uk

訳注1:企業にとっての利害関係者で、株主、従業員、地域コミュニティー、顧客、関係省庁など、企業活動において対応していく必要がある人々や団体。
訳注2:ネスレの母乳代用品の販売の問題についてはウィキペディアを参照。また、母乳育児支援ネットワークのウェブサイトには母乳代用品の販売流通に関する国際規準が掲載されている。
訳注3:危険で非衛生的な職場環境、極めて低い賃金での長時間労働、労働者の団結や抗議に対する不当な解雇など、労働者の基本的な権利を無視して働かせる搾取工場のこと。



 


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