核廃絶を目指して
〜世界の反核運動の情報
RESIST!
Anti-nuke action across the world.
New Internationalist No.412
June 2008 p19-20

悪魔の取引に魅了されるインド

インド国内では、核保有国インドの未来について激論が交わされてきた。そのため、インドの原子力発電産業の拡大を米国が容認する代わりに、南アジアにおける米国の影響力増大を認める米国との条約の議会承認が遅れている。

インドのCNDP(Coalition for Nuclear Disarmament and Peace)のコーディネーターであるAchin Vanaikは、「インドはこの取引で得をしようなどと考えてはいけない。なぜなら、この取引に手を染めれば、米国の核に対する無責任な姿勢を正当化している多くの国々の一員となってしまうからです」と述べる。

CNDPは、パキスタンにおける活動パートナーであるPakistan Peace Coalitionと密接な連携の下、南アジア非核地帯創設を目指してキャンペーンを行っている。「スリランカやネパール、バングラデシュといった近隣諸国は、核兵器保有のためにインドやパキスタンがやってきたことを好ましく思っていません」とAchinは目を輝かせて言った。そして、「私たちはこれらの国々の怒りを利用するべきです。もしもバングラデシュが南アジア非核兵器地帯に含まれれば、それがどんなに素晴らしいメッセージになるのかを考えてみてください」と語った。

CNDP India www.cndpindia.org
South Asians Against Nukes www.s-asians-against-nukes.org
Pakistan Peace Coalition www.sacw.net/PPC/


条約締結に向けた国際キャンペーン

世界でも指折りの平和運動組織の多くが協力し、いかなる種類の核兵器の開発や保有、そして使用も禁止する「核兵器条約」の締結を求めて国際キャンペーンが展開されている。ICAN(International Campaign to Abolish Nuclear Weapons)は、これまでオーストラリア、カナダ、デンマーク、フランス、インド、マレーシア、ノルウェー、スウェーデン、そして英国でキャンペーンを行ってきた。キャンペーン発起人のひとりであるFelicity Hillは、「私たちの考え方はすでに勢いを得ており、直ちに交渉を開始すべきとした昨年の国連決議案には127カ国が賛成票を投じました」と述べた。しかし、核保有国9カ国はいまだに条約締結に前向きな姿勢を見せていない。
  このキャンペーンを応援しよう
最新のニュースと各国情勢についてはこちら www.icanw.org


煮え切らないオーストラリア

ICANのキャンペーンはオーストラリアから始まった。ICANのコーディネーターであるJessica Morrisonによると、オーストラリアでは核問題に対する懸念が高まっているという。昨年の総選挙でオーストラリア労働党は、自らの立場から核兵器禁止条約に向けて率先して動いていくことを約束した。当初の兆候を見ると、この公約は遂行されるだろう。

オーストラリアに原子力発電を導入するという計画を阻止した今、運動家たちが次に注目しているのは国内の大規模なウラン鉱業だ。「BHP Billiton社は、南オーストラリア州のオリンピックダムに、世界最大のウラン鉱山の建設を計画している」とAustralian Conservation FoundationのDavid Noonanは明かす。「その鉱山では、2014年から2万トンのウランが生産される見込みです。そのほとんどは中国へ輸出されることになっていますが、2008年後半に行われる議会の審議結果によってはロシアにも輸出されます。いずれにしても、核兵器をさらに拡散させるリスクを高めるものです」

Antinuclear Australia www.antinuclear.net
Australian Conservation Foundation www.acfonline.org.au
Friends of the Earth www.foe.org.au/campaigns/anti-nuclear/
Medical Association for the Prevention of War www.mapw.org.au


被爆者に背を向ける日本

現在日本には、広島と長崎の原爆投下を生き延びた生存者が30万人いる。彼らは「被爆者」と呼ばれているが、国から医療手当の支給を受けているのはその中の1%にも満たない。被爆者の組織である日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の岩佐幹三は、がんに苦しみながらも公平な処遇を実現させることを決意している。

岩佐は当時を振り返る。「原爆が投下された後、最も手厚い緊急支援が必要だったのは、私たちのような被爆者でした。米国占領軍と日本政府は事実を隠蔽し、救済措置を講じなかったのです。私たちは今でも、あの原爆から攻撃を受けています。死の灰を浴びたり吸い込んでしまったりした人々は、がんを患い、ひどい苦痛を受けています。にもかかわらず、日本政府が原爆症として認定しているのは、爆心地のごく近くで初期放射線を浴びた人々に限られているのです。私たちは今、全国的に裁判を起こし、死の灰とがんとの因果関係を国に認めさせようとしています。これまでに6件の裁判で勝訴しました」

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協) www.ne.jp/asahi/hidankyo/nihon/
原水爆禁止日本国民会議(原水禁) www.gensuikin.org/index.html
原子力資料情報室(CNIC) http://cnic.jp/


スター・ウォーズの息子の帝国への反撃

政権に就くやいなや、ジョージ・W・ブッシュは、米国の長年の夢であった「本土ミサイル防衛(NMD)」の実現に向けて手はずを整えてきた。これは、米国に向かって飛んでくるいかなる核ミサイルでも捕捉して迎撃するというシステムである。別名「スター・ウォーズの息子」[訳注]と呼ばれるこのシステムは、英国、ポーランド、チェコ共和国にそのシステムの一部の施設を置くことで初めて成り立つものである。

このシステムはかなり不評である。多くの人々が、このミサイル防衛への参加で自国が軍事攻撃の目標になるのではないかと懸念している。特にポーランドとチェコ共和国の人々は、このミサイル防衛システムが自分たちを対象としてものだと考える隣国ロシアとの緊張が高まっていることを心配している。St Petersburg Council for Peace and ConciliationのVera Brovkinaは、「米国のミサイル防衛計画は、世界をまさに新たな冷戦へと向かわせているのです」と警告する。

チェコ共和国では、68%の人々がミサイル探知レーダーの受け入れに反対している。No to Bases 連合のJan Tamasによれば、キャンペーン活動家たちはすべての手を尽くしてきたという。チェコ政府は受け入れを推進するつもりでいるが、抗議行動とレーダー設置予定の軍事基地が非暴力的に占拠されたことを受け、署名式典は延期されている。

Global Network against Weapons and Nuclear Power in Space
www.space4peace.org
No to Bases www.nezakladnam.cz/en/
Online petition www.nenasili.cz/en/
Yorkshire CND www.yorkshirecnd.org.uk


核武装するよりも裸のほうがマシ

2007年11月に「中東における核の課題」というセミナーが行われたが、勇気あるイスラエルの学生たちはそのセミナーに我慢ならなかった。なぜなら、セミナーの内容がバランスを欠いたものであったからだ。イスラエルのシモン・ペレス大統領が演説を始める寸前に、彼らは立ち上がって裸になり、「中東の核武装を裸にしよう」と書いたバナーを掲げた。

「私たちは、この会議の主催者に、中東における真の核の課題について議論するために、偏りのない討論者選びをするように求めてきました。しかし実際には、『安全保障』の専門家しか呼ばれておらず、イスラエルが核を所有する必要性を正当化するばかりでした」と、イスラエルのGreenpeaceで軍縮キャンペーンを担当するSharon Dolevは語る。イスラエルは自国の核保有を肯定も否定もしない『あいまい』政策をとっている。イスラエル国内ではこの政策は冷静な計算された政策だと考えられているが、世界の他の国々にとっては強引で幼稚っぽいものである、とDolevは説明する。ちなみに、ペレスは学生らのこの妙技を面白がったと伝えられている。

Greenpeace’s Nuclear-Free Middle East campaign
www.greenpeace.org/mediterranean/campaigns/nuclear-free-middle-east/


ヨーロッパのごたごたをのがれて

NATO(北大西洋条約機構)の「核兵器共有」協定によって、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコ、英国の欧州6カ国は、アメリカの480基の弾頭を自国内に配備している。米国大統領は、いついかなる時でも、配備している国の許可を得ることなく発射ボタンを押すことができる。

ベルギーでは、核兵器に反対する都市を結びつける国際的な取り組みが野火のように広がっている。1982年、広島と長崎の両市長によって平和市長会議という組織が設立された。これにより、「市長には市民を守る義務があり、都市を攻撃目標にしてはならない!」という信条を共有する、世界127カ国、2,170都市の市長たちのネットワークが築かれた。

毎日、数都市の市長たちがこのネットワークに加わっている。「2003年秋の平和市長会議では、ベルギーの加入者はたった6名でした」。コーディネーターのPol d'Huyvetterは語る。「2008年には、ベルギーの全市長589人のうち、310人を超える市長が加入するまでになりました! 彼らは、新聞の社説の対面ページの特集記事で意見を表明したり、閣僚たちを自ら訪ねて働きかけを行ったりしています。さらに市長たちは、核施設の非暴力的な封鎖にも加わっているのです!」

2020 Vision Campaign www.2020visioncampaign.org
Europe for Peace www.europeforpeace.eu
Mayors for Peace(平和市長会議) www.mayorsforpeace.org


8番の針金で核問題も解決するキウイ

核兵器廃絶を目指す、極めて効果的な市民の主導的取り組みの多くは、アオテアロア/ニュージーランドで生まれたものだ。1980年代、ニュージーランドの人々は、自分たちの家や学校、教会や職場、そして都市を非核地帯とした。「かつて核兵器を搭載した軍艦を入港させていた米国は、さぞいらいらしていることでしょう!」 ニュージーランドの平和活動の中心的人物であるAlyn Wareが当時を振り返る。

1990年代、アランは他の活動家たちと国際司法裁判所(世界裁判所)に裁定を求めるキャンペーンを行い、その結果核兵器の使用とそれによる威嚇は違法だとする裁定が下された。そしてまた、保有核兵器の廃止が国々に義務づけられた。アランは、核廃絶条約のために草の根的な支援をする2,000もの組織による国際的ネットワークであるAbolition 2000の立ち上げにも尽力した。核兵器禁止条約案の起草者のひとりでもある。

 「私たちは、他の国々から遠く離れた場所にいるので、もし何かが壊れてしまった場合には、手元にあるものを何でも利用してすぐになんとかする必要があるのです。そんな慣習が身に付いています」とアランは説明する。「この国は膨大なフェンス用ワイヤ(針金)を使う農業国なので、『8番の太さの針金があれば何でも直せる』ということわざがあります。現在のキウイたち(ニュージーランド人)は、21世紀の『8番の針金』である情熱、創造性、情報伝達ネットワーク、そして自分たちがより良い世界を生み出していくという信念を持っています。ほんの少しの知識と行動で、誰もが違いを生み出すことができるのです」

Abolition 2000 www.abolition2000.org
Nuclear Weapon Free Zones www.opanal.org/NWFZ/NWFZ’s.htm
Parliamentarians for Nuclear Non-Proliferation and Disarmament www.gsinstitute.org/pnnd/
World Court Project www.lcnp.org/wcourt/


訳注:1980年代、当時のレーガン米大統領が、弾道ミサイルを地上からのミサイルや人工衛星のレーザーなどで撃墜する戦略防衛構想(SDI)を提唱し、これはスターウォーズ計画とも呼ばれた。SDIは巨額の費用を投じたが結局実現しなかった。現大統領の父親のブッシュ大統領は、国家ミサイル防衛(NMD)と戦域ミサイル防衛(TMD)を提唱していた。ヨーロッパのミサイル防衛(MD)に対してはロシアの反発が強く、周辺国、特に旧共産圏の東欧諸国や旧ソ連邦の国々にはロシアからの圧力がかけられている。


翻訳協力: KG/大野直子/矢澤実穂/本多由香子


この号の目次へ

 


オンラインリポート一覧へ