援助資金はどこへ消えたのか? Where has the money gone?
New Internationalist No.417
November 2008 p20

アブドル・バシルがアフガニスタン支援の微妙な問題点について探る。

「9.11以降世界の支援国は、会合を開くたびにアフガニスタンに何十億ドルという援助を約束してきました。しかし私たちは、そのお金がどうなったのかを知りません。それが本当に支払われたのかさえ分かりません。そのような巨額な資金の痕跡を示すようなものが、この国にはほとんど見あたらないのです」。カブールの40歳の教師はこう語った。

約束される援助とその効果について、アフガニスタン人は徐々に疑いの目を向けるようになってきている。何十億ドルという資金がこの国につぎ込まれていると言われているが、人々の生活にはほとんど変化はない。支援国は、これまでに完成したほんのわずかな道路を自画自賛して宣伝してきたが、アフガニスタン人たちは道路建設が自分たちの生活に大きな変化をもたらすとはあまり考えていない。彼らは、支援国が道路建設を優先していることについて、軍事・戦略的な理由があると考えている。人々の生活により直接的な変化をもたらすようなそのほかの分野は無視されている。

援助を突き動かす軍事・戦略的な目的は、その当初からあらわになっていた。援助のかなりの部分が、軍主導の地方復興チーム(PRT)につぎ込まれている(NI日本版105号掲載「人々の心の叫び」参照のこと)。PRTを通じた資金は、「即効性のある」プロジェクトに使われているが、そのほとんどは無駄だと考えられている。3年前に建てた学校にはいまだに教師がおらず、診療所にもスタッフがいないことなどがその良い例だ。

ある男は言った。「驚いたよ。兵士がやって来て、子どもたちに何度もおかしやサッカーボールあげるんだよ。今子どもたちに必要なのは、もっと良い教育、保健医療サービス、栄養のある食べ物なのにね。国だってそのためのサービスを現在だけでなく将来にもわたって提供する基本的なインフラが必要だっていう時なのにね。軍が開発援助のことを十分に理解していないことははっきりしているよ。不思議なのは、彼らが必要なことを理解して行動を変えるのに、なんでこんなに時間がかかるのかということだよ」

国際部隊がタリバンを追放し、この国の復興を支援すると約束して以来、アフガニスタン人が待ち望んでいるのは変化なのである。しかし社会のほとんどの部分では、起きた変化がもたらす恩恵は不十分なままだ。「どうなってるんだ」と男は続ける。「世界で最もカネと力を持っている国々がここにやって来て7年、彼らはこれまでずっと復興や開発について話し合ってきた。だが、電気の不足はタリバン時代よりもひどいままだ」

不安定な状況、政府の貧弱な統治と管理、広がる腐敗が、再建と開発にブレーキをかけてきた。おそらくアフガニスタン国軍を除けば、このような問題に対処する能力はあまりにも不十分なままで放置されている。支援国の援助資金のかなりの部分は、プロジェクトを通して民間の建設会社や警備会社に支払われている。しかしそこには何段階もの下請けが入り、各下請けはかなりの管理費をとっている(NI日本版105号掲載「アフガニスタン ─ その事実」参照のこと)。企業活動の規制は不十分で、企業は物事を隠したまま説明責任も問われず、警備管理に高いコストをかけている。アフガニスタン人の能力向上に、このような企業はほとんど何の役にも立っていない。

アフガニスタン人の能力は、この国の現在と未来にとって鍵となるものである。アフガニスタン人がこの国の復興のプロセスを主導していると感じられれば、彼らはそのプロセスに参加するだろう。復興に時間が必要なことはアフガニスタン人も理解している。彼らが抱く期待は大きなものではないが、その一方で、状況が向上していることを実感したいと強く思っている。「政府は、現在の状況をタリバン時代よりもましになったと宣伝することをやめるべきだ。現政権は7年間その座に就いているが、タリバンはカブールを5年支配しただけだ。アフガニスタンはもっと良い時代があったのだから、比べるならその1978年以前を基準にする必要がある」(NI日本版105号掲載の「アフガニスタンの歴史」を参照のこと)と、あるアフガニスタン人が私に話した。

現在の援助システムが続く限り、1978年以前のレベルを短期間のうちに達成することは困難である。ほとんどのアフガニスタン人は農業を生活の糧としているが、ここ数年間農業分野への投資は非常に少なかった。政府と支援国は、NGOがかかわっている国家連帯プログラムから多くのことを学べる。このプログラムでは、アフガニスタン人が意見を述べ、自身で決定することができ、資金の使い道についても管理することができた。

アフガニスタン人は率直な人間を信じる。2004年の選挙では、人々は現在の政府に信頼を寄せ、大統領選では多くの票が集まった。人々は再び同じように投票するのだろうか? 2009年の選挙は、人々の心の動きを計る選挙となるだろう。多くの機会が見過ごされてきたが、すべてが失われてしまったわけではない。もしもアフガニスタン人が変化を感じとり、それが彼らの暮らしにとって良いものであれば、このぜい弱な国を救い出すチャンスはまだあるのかもしれない。


アブドル・バシル
British and Irish Agencies Afghanistan Groupのアフガニスタン援助の専門家。この記事は、彼の個人的な意見である。



2008年11月号 NI417号/NI日本版105号
アフガニスタンからの証言 ─ 出口の見えない戦争
Through Afghan eyes - The war that won't end

 


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