裸の王様
(一部要約)
Naked Emperors
New Internationalist No.421
April 2009 p20-28

経済、税制、環境について、その現実、あるべき姿、より良い形への処方箋、私たちにできることを分析・提案する。

8 経済って何?

・家事労働。これは冗談ではなく、「economy(経済)」という言葉は、「thrift(倹約)」と「administration(管理)」で「家事労働をうまくこなす」ことに由来する言葉である。

実際は? 子どもの部屋よりも散らかっている。グローバル化した混乱の根底には、過剰生産、過剰消費、破綻不可避な負債が横たわっている。経済の悪影響があっという間に広まったのは、貿易自由化によって各国の経済システムの結びつきが深くなったからだ。1980年代から電力など公的事業の民営化を進めてきた政府だが、依然として経済への介入は行われている。
それが真の姿? いいえ。グローバル化から取り残され、銀行業界に旧来の仕組みが残る国々では、輸出依存型経済の国々よりも今のところ危機による影響は少ない。
対策は? 脱グローバル化を進めること。国内や地域での生産と消費を促進する。その方が環境負担が少ないだけでなく経済的だ。政府が金融機関救済につぎ込んでいる巨費を一部でも国内産業に回せば、経済の活性化と雇用創出につながるだろう。生活に不可欠な電気や水道会社を再度国有化し、透明で責任ある経営ができるようにする。国際貿易において必要なものは、労働者を搾取して作った大量の商品の取引ではなく、より環境に配慮した商品とフェアトレード商品である。金融機関救済につぎ込んでいる巨費の一部を開発途上国援助に回す。以上のようにすれば、金融に支配された世界経済ではなく、人が中心の世界経済が出現するだろう。
私たちに何ができる? 現在の金融危機で危険なのは、価値観が変わるチャンスが到来しているにもかかわらず、人々が節約に走るにつれて自己中心的になっていくということだ。とにかく、信念を持っていることは続けていく。例えば、スーパーよりも地域の商店が重要だと思えば、商店で買物をして買い支えていく。独立したメディア、オーガニックフード、フェアトレード商品も同じで、その存在が重要、それをもっと広めていきたいなどと考えれば、支援していくことが必要である。また、これまで常識と思われていた前提や価値観を考え直してみる。例えば、経済成長は常に「良いこと」というのは正しいのだろうか? 「良い経済成長とはどんな経済成長のことを言うのか?」とは、考える価値のある問いかけだろう。これからの動きについては、トランジション・タウン運動や、2007年7月号のNI「パーマカルチャーを探し求めて」を見る。

9 税制って何?

・例えば、保健医療、教育、公共交通機関などを、国が公的な資金で支えていけるようにするもの。累進課税では、収入が高いほど税金も高くなる。

実際は? 貧困層から富裕層に富の移転を行うもの。普通の会社員であれば、毎月受け取る給料からはすでに税金が差し引かれている。だが、金持ちは課税を避けるすべを持っている。多国籍企業は、租税回避地を経由した分かりにくい会計処理を行って税金を免れている。世界の貿易の6割は、企業の子会社または租税回避地を経由している。開発途上国での課税逃れと、開発途上国からの資本流出を合わせると、その額は開発援助による資本流入の7倍にも上る。世界で最も豊かな企業や個人(例えば、メディア王で有名なルパート・マードックや反貧困活動で有名なミュージシャンのU2のボノなど)は、わずかな税金を払ってすませているか、全く払わずにすませている。
それが真の姿? それは違う。
対策は? 金持ちにもっと払わせることはできる。租税回避地は閉鎖するべき。透明性を確保しなければ良い税制とは言えず、秘密主義のスイスの銀行のような方針は今後は認められない。通貨、株、債権のすべての売買に課税すれば、投機的な取引が減少するだけでなく、その税金をミレニアム開発目標(2015年までに世界の貧困を半減する目標を掲げている)の達成に向けて投入することができる。国際貿易にも課税し、環境に配慮していない活動にも課税する。
私たちに何ができる? 租税回避地に子会社を持つ銀行(例えば、シティバンク、バークレイズ、ロイド、HSBC、RBSなど)をボイコットする。まずは自国内の租税回避地閉鎖に取り組むよう政府に訴える。金持ちの個人と大企業が税を負担しなくてもすんでしまう抜け道をふさぐように政府に訴える。開発途上国のエリートの中には、自分の国の公金をかすめ取ってそれを欧米の銀行に預けている連中がいる。そんな連中を告発する活動に取り組む人々の支援をする。2008年10月号のNI「世界の税金 ─ 格差を広げる仕組みと実態」と、タックス・ジャスティス・ネットワークで情報を集めてみる。

10 環境って何?

・ええと、そのもの?

実際は? 資本主義者で人間中心主義者でもある人々の視点から言えば、環境は、開発して最大限利益を搾り取るために存在しているということになる。それは、鉱山開発でも廃棄物処分場でも同じ理屈である。
それが真の姿? 違う。先住民のコミュニティーでは、「相互依存関係」というもっと健全な暮らし方が実践されている。自然環境を敬い保護することが必要だ。西洋の国々でもこのような自然観を持つ方向に向かいつつある。
対策は? 考え方を変える新たなチャンスが訪れている。持続可能で環境に配慮した生産方法を開発する。多様な再生可能エネルギーの利用を支援する。今のところ、環境と倫理的分野への投資は全体の1%でしかない。今後、すべての開発と投資において基本的な環境基準を設け、それを順守する。生物に不可欠な水、森林、海、大気など、民営化すべきでないものを明確に定める。そして、鉱物資源と化石燃料もこれに加える。近視眼的なものの見方を改め、次世代のことを考えるようにする。これまで、「成長」と「良い生活」は切っても切れないとして一緒に考えてきたが、この2つを分けて考えることから始めよう。
私たちに何ができる? 現在の金融制度の混乱よりもずっと恐ろしい気候変動に集中して取り組む。再生可能エネルギーの利用を支援し、化石燃料の新たな利用法とされる「クリーンな」石炭やオイルサンド(油砂)に反対する。多国籍企業によって環境が搾取されている開発途上国の抵抗運動を応援しよう。アマゾンの石油開発への反対運動などはその最たるものだ。国内では、大規模で真の二酸化炭素削減(オフセットではない)を達成するように政府に働きかけよう。2009年12月に開かれるコペンハーゲンでの気候サミットに向けて活動する人々の輪に加わろう。詳しくは、2009年1/2月合併号のNI「クライメート・ジャスティス─公平な温暖化対策」を読もう。

1〜7(銀行、家、仕事、市場、カネ、クレジット、金融)についてはNI日本版誌上でご覧ください。


 


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