中国はどこへ向かうのか
(一部翻訳)
The next dynasty
New Internationalist No.423
June 2009 p18-19

共産党が中国の権力を握ってから60年、改革・開放政策によって世界貿易の流れに足を踏み入れてから30年、北京の天安門で改革運動をつぶしてから20年がたった。これからこの国はどこへ向かうのか? 中国の共産主義が世界の資本主義を救うという意見がある一方で、あまりにも急激な経済成長が世界を滅ぼすという意見もある。現在の良いニュース、悪いニュースなどから問題点を整理し、中国の将来を探る。

…NI日本版からの続き…

不安:
中国のソフトパワーの広がり

良いニュース:国際舞台では、軍事力よりも見えにくいやり方で勢力拡大を図っている。台湾とチベットの領土問題と、海上輸送路の防衛を除けば、中国の対外戦略はおおむね他の国との衝突を避けるものである。
悪いニュース:他国への非干渉主義と「ビジネスはビジネス」と割り切って考える中国の姿勢は、ビルマ、ジンバブエ、北朝鮮、ウズベキスタン、カザフスタンなど、人権侵害の著しい国々への開発援助と武器供給として現れている。すでに中国は、スーダンやアンゴラなど石油が豊かな独裁国家の最大の貿易相手国となっている。北京による独裁者たちへの支援は、この手の政府が世界のあちこちで復活することを意味しているのかもしれない。
予測:国際市場と国際政治における中国の「資本共産主義」の影響は、現在も増大している。しかし中国は、さまざまなことをあれこれと指図したり要求したりする干渉的スタイルの米国とは異なり、人々の世界観を変えることによって影響力を高めることを狙っている。中国の指導者は、中国の価値観や考え方の道徳的権限を増大させるために「ソフトパワー」を動員する(NI日本版p8参照)。そこには、これまで西洋の価値観によって世界の方向性が定められてきた状況を変えるという意図がある。(5) さらに、国外には推定でアジアに3,100万人、その他の地域に850万人(6)とも言われる多くの中国人が住んでおり、中国の世界観は徐々に世界中の人々からも直接的に影響されるようになっていくだろう。このような過程の結果、世界の人々が持つ世界観自体も変化していくだろう。マクドナルドとゲティスバーグの演説[訳注:1863年に米国のリンカーン大統領が行った演説で、「人民の人民による人民のための政治」で有名]はもう古く、これからは中国茶と儒教の時代になるのかもしれない。

不安:
増加を続ける中国の鉱物資源、エネルギー資源への需要は、やがて資源戦争を引き起こす。

良いニュース:中国は増え続ける石油と鉱物の需要に対応するため、ラテンアメリカ、アフリカ、中東の国々が早急に必要としているインフラへの投資と開発援助を行っている。この動きにより、これまで開発途上国にあまりにも不利な条件を飲ませてきた米国式自由貿易の優位な立場が揺らいでいる。中国がラテンアメリカやアフリカの国々と経済的関係を結ぶ場合、米国などと違って政治的条件を持ちかけることはない。
悪いニュース:鉱物資源の動向を研究する経済学者らは、中国が10年以内に世界の主要資源の半分以上を消費する可能性があり(NI日本版p7を参照)、他の国々の資源確保の長期的見通しに影響を与えると考えている。その膨大な国内需要のために、中国はますます多くの鉄、石油、穀物を求めて世界中に手を伸ばし、それにつれて国際価格の上昇が起こる。このようにして2004年には、中国の輸入増加が主な原因となって鉄鋼価格の急騰が起こった。また同時に、輸出していた石炭を国内製鉄業界に回す方針を決定した後、1年もたたないうちに石炭価格が1トンあたり120ドルから450ドルに高騰した。(4)
予測:中国とそのほかの国々との間で拡大している資源争奪戦は、少なくとも短期的には商品市場での攻防戦となりそうだ。このため、これまでは世界中から容易に資源を調達できていた国々もそれが難しくなり、地域の市場を通したより確実な調達方法の魅力が高まるだろう。

機会:
近年中国が国際社会において重要な地位を占めるようになり、このことが先進国から開発途上国へという国際社会における権力の移行に役立つだろう。


予測:4月にロンドンで行われたG20(世界主要20カ国・地域)会合の結果を見るとそれは考えにくい。G20は、G8に中国、インドネシア、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなどの開発途上国を加えたグループで、かなりの影響を及ぼしてもおかしくはない。しかし、世界金融危機への対策を話し合うために招集された4月2日の会合では、開発途上国にとってより公平になるよう貿易ルールを修正したり、世界銀行や国際通貨基金(IMF)のやり方に多大な影響を及ぼす政策や権力構造に意味のある変更が加えられたりすることはなかった。その一方で米国とEU(欧州連合)は、IMFが開発途上国経済を刺激するために融資する資金として、2,500億ドルから5,000億ドルを拠出することを提案した。IMFの理事会では相変わらず富裕国の代表権が大きすぎる。ヨーロッパが議席数の3分の1を占め、米国が投票権の約17%と拒否権を持つ。中国はIMFに400億ドル拠出したことにより、理事会に1議席得ることができるかもしれない。しかしそれでも、IMFへの影響力が著しく小さいアフリカやアジアなどの開発途上国の助けにはならないだろう。(7)


原注
(4) Shaun Breslin, China and the Global Political Economy, Palgrave Macmillan, New York 2007. (5) Mark Leonard, What does China Think? Fourth Estate, London 2008. (6) A thoroughly researched list appears on Wikipedia - http://en.wikipedia.org/wiki/Overseas_Chinese. (7) Walden Bello, U-20: Will the global economy resurface? www.focusweb.org


このほかの不安については、NI日本版誌上でご覧ください。

 


オンラインリポート一覧へ