アマゾンの森を石油開発から守る保証書とは
Bond aid
New Internationalist No.428
December 2009 p14-15

エクアドルは、コペンハーゲンで行われた国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の先を見据えた大胆な提案を行っている。それは、国内に埋蔵されている膨大な石油を採掘しなくてすむようにするため、国際社会はエクアドルに対して資金を提供すべきだというものだ。現在この話はどうなっているのか、「ヤスニに関する大統領委員会」のヨランダ・カカバゼ委員へのインタビューを交え、ジェス・ワースが報告する。

2008年NIは、ヤスニの熱帯雨林を守るためのキャンペーンにかかわった。ヤスニとは、エクアドルのアマゾン原生林にある生物多様性が驚くほど豊かな地域のことで、その下には8億5,000万バレルの石油が眠っている。

エクアドルには、石油採掘によって人と環境が荒廃させられた痛々しい歴史がある。そのため、地中の石油を採掘せずにすむように、エクアドルへの資金提供を求めてエクアドルのコレア大統領が国際社会に挑んだと聞いた時、私たちはその大胆さにわくわくしたが、それは本当にうまくいくのだろうかという不安も同時に頭をよぎった。

私たちは地元の村人や森に住む先住民の人々と話をしたが、彼らは不安を感じていた。この計画について、彼らには何の相談もなかったのである。政府が果たして真剣なのかどうか、彼らには分からなかった。国際社会から提供された資金がどのように使われるのかも不明である。また私たちは、これは実は巨大なカーボン・オフセット事業計画なのだという噂も耳にした。それは、北の先進国の温室効果ガスを垂れ流す汚染者たちが「何の責任もとらずに逃げおおせる仕組み」で、森に頼って生活している地元の人々の権利に影響を与えかねないものだ。

そんな状況から1年がたち、エクアドル政府の計画はより具体的になってきた。私はこの10月、「ヤスニに関する大統領委員会」のヨランダ・カカバゼ委員に会った。暖かくて親しみやすい彼女に、私の疑問点をぶつけてみた。


ジェス・ワース(JW):ヤスニ提案の中身について、簡単に説明をお願いします。
ヨランダ・カカバゼ(YK):これは、「気候変動に対して何かする責任はすべての人々にある」という、とても基本的な考え方に基づいています。エクアドルは、温室効果ガスを大量に排出している国々と協力関係を結んでいきたいと考えていますが、その理由は、すべての人々に恩恵をもたらす目標を達成するためです。排出国には、エクアドルが石油開発をせずにそのまま地中にとどめておくための費用を負担してもらいます。そして私たちはその資金を、エクアドルにとっても地球にとっても極めて重要な目標のために使います。ヤスニだけでなく、エクアドルにある40の保護区が確実に保護されるための資金にします。これは、国土の40%にあたるので、保護面積の割合という点でエクアドルを世界有数の国に押し上げるでしょう。また資金は、貧困の根本的な原因の解決にも使われます。地元の人々が、森を破壊することではなく、森を利用することによって経済的恩恵を受けるような手段を提供するのです。ですからこれは社会的であり、生物多様性の側面と気候変動対策の側面をも含む計画と言えるでしょう。

JW:試算では、埋蔵されている石油を販売した場合の収入の半分にあたる数億ドルもの資金が必要になるという結果が出ているそうですが、その資金はどこから調達できると思いますか?
YK:現在、ヨーロッパ諸国からとても興味深い反応をもらっています。ドイツからはもう1年以上前に好意的な返答をもらい、私たちの提案を支えるための科学技術の部分に、スペイン政府と一緒になって資金を出してくれました。スペインは非常に前向きです。現在、どの程度の資金援助が可能なのかスペイン政府と協議しているところですが、もしかすると資金提供の代わりに、スペインに対してエクアドルが抱えている債務の帳消しという形で対応してくれるかもしれません。フランスを訪問してきましたが前向きな反応でしたし、ベルギーにも今後行ってみる予定です。スウェーデンとノルウェーはすでに訪問し、オランダと米国はこれからです。英国は単に「ノー」とだけ返答をもらいましたが、再度提案してみたいと思います。

JW:どんな仕組みになるのでしょうか?
YK:エクアドルは、ヤスニ保証書(CGY)という証明書を発行します。これは、公債証書のようなもので、基金に出資すると渡される法的拘束力のある書類です。もしもエクアドルが合意を破った場合、資金は出資者に返還されます。石油よりもこの「CO2無排出保証書」の方がより多くの資金を私たちにもたらしてくれるというのは興味深いポイントです。このまま石油採掘を進めれば、私たちが国として失うものは、環境への被害という意味でもっと大きくなります。これを数量化したのは私たちが始めてです。石油を売ることよりも採掘せずに地中に留めておくことの方が、エクアドルにとってより大きな価値になるということを、私たちは証明するのです。

JW:ヤスニ保証書にお金を出すよう、人々を説得できるのですか?
YK:できると思います。適切な意思決定権を持った人々と話すことが重要です。京都議定書の細かい規定に縛られている技術官僚は、すぐに「京都議定書ではそれは許されていない」という反応をします。それは当然です。私たちが提案していることは、京都議定書とはまったく違う、革新的なことなのですからね! 京都議定書では不十分だったということ、そして私たちには、二酸化炭素排出量を減らす他の手段をつくりあげていくことが必要なのだということを、世界は理解すべきです。このヤスニ提案は、そんな手段のひとつなのです。

JW:では、CGYは炭素クレジットのような働きをするのですか? そして、炭素市場での取り引きは可能になるのですか?
YK:CGYは炭素クレジットではないので、炭素クレジットとして市場で取り引きされることはありません。根本的に違うものです。私たちを支援してくれる国々は、炭素債のように扱うことでしょう。原油価格にもよりますがCGYはだいたい1枚50ドル程度です。原油市場が変動すれば、ヤスニ保証書の額も変動します。

JW:民間からもある程度の資金が入ってくると思いますか?
YK:主に各国政府からの資金になると思いますが、民間の資金、個人の寄付金を締め出すものではありません。例えば、あなたが1バレル分のCGYを買ってくれたとします。もしも誰かの結婚式に招かれてお祝いを贈りたいと思ったら、CGYをプレゼントすることができます。または、子どもが産まれたらその子にCGYをプレゼントすることもできます。私たちは、東京、南アフリカ、ストックホルム、ブラジル、ベトナムなどの500万、1,000万、2,000万の人々、この新しいアイデアに賛同することから何かが変わると思ってくれる人々に関心を持ってもらいたいのです。

JW:金銭的な見返りがなくても人々が動いてくれるという見通しは甘すぎる、という意見もあると思いますが。
YK:それは、勝利とは勝者が常に物質的な恩恵を手にするというメンタリティーの現れです。このような取り組みへの関与は、経済的利益を生み出すものではありません。精神的で知的、人類のための利益を得るものなのです。それはエクアドルだけでなく、地球のための利益なのです。

JW:この仕組みはコペンハーゲンでの会議とどう関係しているのでしょうか?
YK:コペンハーゲンは、京都議定書の枠組みの中で開かれる会合です。つまりこのような新しいアイデアではなく、過去の結果と、今後もたらすべき結果について話し合う場です。でも私たちとしてはこの機会を利用して意見を述べ、ロビイング(働きかけ)をし、説得を行うつもりです。そして、京都議定書がすべてではないということを示します。京都議定書はひとつの手段であり、他の手段をつくり出すこともできるのです。

JW:資金の使い道について教えてください。それを決定する仕組みは? また、地元の人々にも発言する機会は与えられますか?
YK:資金はまず国際信託基金としてまとめられ、そこから4つの活動に向けて支出されます。40の保護区については先ほどすでに触れましたが、2つ目は、森林再生、森林再生、森林再生です。エアドルには残念ながら、沿岸部から山間部、そしてアマゾンにも、荒れてしまった土地が全国的に見られます。そのような土地を再生するのです。3つ目はエネルギー供給基盤の問題です。エクアドルは赤道直下の熱帯の国で、風力発電、太陽光発電、地熱発電、水力発電の高い可能性を持っていますが、現在エネルギー供給の要となっているのは石油であり、これはとてもおかしなことです。私たちは、代替エネルギーに移行していきたいと考えています。4つ目は、保護区やその周辺コミュニティーの社会的問題に取り組む資金とすることです。

JW:不安を感じていることのひとつが、この仕組みに関して地元コミュニティー、先住民の人々に何の相談もなかったということです。彼らは、何が起きているのか知りません。
YK:確かにそうです。私たちは、先住民向けにコミュニケーションをとっていくことは控えるようにしました。何かが成功したと伝えられない限り、期待だけを高めてしまうことになりかねません。エクアドルの先住民族の歴史は、残念なことに虚偽の発表や、一度も実行されることのない嘘の約束に埋め尽くされてきました。現在ようやく情報を広め、先住民やNGO、地元政府、民間セクター、メディア、学者との公開協議や議論を行う段階に入ってきました。

JW:私が心配なのは、これがカーボン・オフセットとして利用されてしまわないかということです。ヤスニ保証書を買えば自国内では引き続き汚染をまき散らすことができるという機会を、化石燃料を使う企業に与えてしまうことになるのではないかと考えるのです。私たちは、低炭素経済へ迅速に移行するための仕組みを求めているにもかかわらずです。
YK:あなたと私の見方はちょっと違っているのかもしれません。ほとんどの政府や民間セクターの組織も、より良い行動をとろうとしています。私たちは彼らを信頼しています。信念に基づいて行動するのか、それとも自分たちのイメージを良く見せるために行動するのかは、変化が起こるのであればどうでもいいことです。ビジネスが活性化するのはいいことです。そうしないと生きていけません。ですから私たちは、まだ始まっていないことを批判する立場はとっていません。私は、現行の取り組みを評価することと、物事が進行中であると考えれば現行の取り組みが前に進むステップのひとつであると理解することが、重要だと思います。もちろん、すべての人々が関心を持つことではなく、世界のどこにもあまり関心を持たない人はいます。しかし、本当に問題意識を持って新しい技術への投資などさまざまな方法を通じて、この地球の未来をより良くしていこうとする人々がいます。私たちの保証書は、このような協力関係を南の開発途上国と北の先進国を結びつけて支援する新しい手段になっていくでしょう。


ぜひあなたの意見を聞かせてください
この話について、あなたはどう思いましたか? ワクワクする将来像でしょうか、それともあまりにも楽観的すぎる話でしょうか? 単に新たなカーボン・オフセットの仕組みなのでしょうか、それとも低炭素経済の実現に向けてお金の流れを変える革新的なアイデアなのでしょうか? 地元住民の権利を尊重したものでしょうか、それとも上から目線で恩着せがましいものでしょうか? なにより……あなたは1バレル分のCGYを購入してみたいと思いますか?

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翻訳協力: 田中 泉


インタビュー映像:エクアドルの環境NGO Accion EcologicaのIvonne Yanezが語るヤスニキャンペーン
“Keep the Oil in the Soil”: Ecuador Seeks Money to Keep Untapped Oil Resources Underground
→Democracy Now!のサイトへ


 
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