脱成長万歳
Vive la decroissance
New Internationalist No.434
July/Aug 2010 p19

フランスの「脱成長」運動を牽引するセルジュ・ラトゥーシュに、フリオ・ゴドイがパリでインタビューを行った

ラトゥーシュは、いかにも70歳のパリ第11大学の元教授という印象を受ける人物だ。しかしこの白髪まじりの経済学者こそ、経済成長と消費主義を批判する急先鋒に立つひとりである。セルジュ・ラトゥーシュが反成長の議論に加わったのはそれほど昔のことでない。彼が「縮退(decroissance)」というフランス語を使って「脱成長(de-growth)」について語り、環境破壊を阻止すべく選択的な経済収縮を訴えたのは、2001年にパリで開かれたユネスコの会議でのことだった。

「英語に訳した『de-growth』という言葉が聴衆に受けたのでこの言葉を使っています」、とラトゥーシュは当時を振り返る。「でも私の言いたかったのは、むしろ『無成長』ということであって、言わば『無神論』に近いものです[訳注:宗教における神のようには「成長」を崇敬しないというニュアンス]。『de-growth』はキャッチフレーズにすぎません」。

そうかもしれないが、ユネスコの会議から10年たち、「脱成長」はフランスでホットな思想になった。フランスのニコラ・サルコジ大統領さえもが影響を受け、2008年にはノーベル賞を受賞した経済学者、ジョセフ・スティグリッツとアマルティア・センの両者に従来の指標であるGDP(国内総生産)以外で繁栄を測る方法を探って欲しいと依頼したぐらいである。

La DecroissanceEntropiaの2誌が脱成長の福音伝播に寄与している。ジャーナリストでは、ル・モンド誌のエルベ・ケンプのような人たちがこの思想を支持し、さらにいくつかの農業者や消費者の団体組織(有機農業協会から地元の旬の収穫物を食べようと主張する「lacavore」と呼ばれる人々まで)が、この運動の背後で活動している。

そしてラトゥーシュの影響はフランス国内にとどまらない。イタリアでは月刊誌Cartaが発展と経済成長に対する彼の批判を広め、「スローフード」運動も同様の方向性を持つものだ。スペインのいくつかの大学では脱成長について講義する教授がいる。

昨年12月のコペンハーゲンの国連気候変動会議(COP15:第15回気候変動枠組条約締約国会議)の下準備として、活動家や草の根の環境ネットワークがClimate Justice Action(CJA)を立ち上げ、「壊滅的な気候変動を避けるために迅速な行動をとること」を目指してき。その選択肢のひとつとしても脱成長が盛り込まれている。ほかにも脱成長に関して多くの国際会議が開かれ、最近では2010年3月にスペインのバルセロナで行われた。また、小規模の集まりがカナダのバンクーバーおよび英国のリーズで開催された。

この思想は急速にひろまりつつある。メキシコ国立自治大学のアナ・エスター・セセナは、ラテンアメリカにも脱成長はが根づいてきていると述べている。ラテンアメリカの一般的な運動では、消費主義に支配されなくともいい暮らしができるという考え方が理解されていると言う。

「私たちは、資本主義が大惨事をもたらすとすでに理解しているのですから、根本的に生き方を変えることによってこの問題と向き合う必要があるのです」、とセセナは記している。彼女はグアテマラ、ペルー、チリ、その他のラテンアメリカ諸国で鉱山プロジェクトに対して広範な反対運動が起こり、またブラジルではアマゾンの森林伐採に対する抵抗運動が広がっている点を指摘する。「人々は、バイオ燃料生産のための大豆やサトウキビを栽培するために熱帯雨林を切り開くことは環境破壊だと十分理解している。こうしたプロジェクトはほとんどの場合、外国の企業や地元の有力者が得するだけであり、支払う代償があまりにも大きいと考えています」。

フランスのサルコジ大統領がGDPに関する諮問委員会を設置したにもかかわらず、フランスはほかのヨーロッパ諸国と同様に失業率を減らす唯一の解決策は従来からの成長経済であるという考え方に固執している(実際フランスでは、1997年から労働時間が少しずつだが増えつつある。)。La Decroissance誌の編集者ビンセント・シェシャールは、この国の政党や組合は「成長というパラダイムにとりつかれており、特に今回の世界的な金融危機にあってますますその傾向が強くなっている」と言う。

では当のラトゥーシュの反応はどうか? 「私たちは価値観を変えなくてはいけません。私たちは利己主義を利他主義に、競争を協力に、働き過ぎをレジャーに置き換えなくてはいけないのです。しかし、価値観は構造的なものであり、原因でもあり、結果でもあります。このシステムへの根本的な問いかけがない限り、価値観の変更は限定的なものになるでしょう」
 実際、その試みは簡単なことではない。しかし、新しい方法を考えてみようではないか。

仏語サイトLa Decroissance, le mensuel des obgecteurs de croissanceも参照のこと。
The Commisssion on the Measurement of Economic Performance and Social Progressの報告はウェブサイト(英語)で閲覧可能。

フリオ・ゴドイ
1990年に亡命を余儀なくされるまでは、グアテマラでもトップの調査報道ジャーナリストであった。現在はIPSのベルリン特派員。



翻訳協力: 速水 葉子

 
2010年7/8月合併号 NI434号/NI日本版122号
脱成長時代へ歩む Zero Growth - Life beyond growth





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