刑務所送りには大物すぎる
Too big to jail
New Internationalist No.482
May 2015 p22

不正行為に対して巨額の罰金が課されるが、注目すべき点は、これまでのところ銀行幹部が誰ひとりとして詐欺などの罪で起訴されていないということだ。イアン・タプリンがその理由について説明する。

メガバンクは、真に多国籍企業で、多くの国よりも大きな権力を持っている。世界の2大金融センターはウォールストリートとシティ[訳注:ロンドンの金融街]だ。この2つが世界の資本市場を支配し、資本主義と法の支配を弱めている。

例えば米国政府は、メガバンクであるJPモルガン・チェースの多数の違法行為は罰金200億ドル相当と判断しているが、銀行幹部は詐欺罪で告訴しないということを決めている。

これは、インサイダー取引で逮捕されたアイヴァン・ボウスキー[訳注1]だけでなく、1980年代のS&L[訳注:貯蓄貸付組合]危機で詐欺を働いた銀行幹部1,000人を逮捕した同じ国での判断なのだろうか? 2000年代初め米国が、ワールドコム[訳注2]やエンロン[訳注3]で不正会計の背後にいた主な人物たちを裁いて投獄したのは事実である。

米国人への多くの善意と約束を携えて当選し、その使命を持って就任したオバマ大統領は、ウォールストリートとメガバンクの権力になぜ立ち向かってこなかったのだろうか?

親愛なるオバマ大統領、あなたは米国人のことをばかにしていませんか?

米国から大西洋を渡れば、内閣に18人の億万長者を含む非常に裕福な英国の首相がいるが、彼は上手に金持ちのエリート層に取り入っている。デービッド・キャメロン首相は、メガバンクであるHSBCの元会長で元貿易投資担当大臣だったグリーン卿に関して、問題ないと思っているようだ。HSBCのメキシコの子会社が、血に染まった麻薬カルテルの汚れたカネ70億ドルのマネーロンダリング(資金洗浄)のための預金を許したことを、グリーン卿が見て見ぬふりをしていたにもかかわらずである。

HSBCは、イラクに関して課されていた禁止措置も破っていたことが発覚している。そしてメキシコに関しては、捜査を怠った英国ではなく米国に対し、最終的に19億ドルの罰金を支払った。HSBCは有罪判決を免れた。そしてこれは、刑務所送りにするには幹部たちが大物すぎるという印象を与えた。またスイスでは、租税回避に加担していた容疑が濃厚になり、HSBCスイスのプライベートバンク部門がマネーロンダリングの容疑でスイス当局の捜査を受けた。

親愛なるキャメロンさん、あなたは英国人のことをばかにしていませんか?

シティは、世界最大の規制なき金融資本の中心地である。英国政府は世界に向け、英国は法の支配と優れた民主制度の下で統治されている、と高らかに宣言しているが、シティには一般市民と同レベルの法の支配は及んでいない。

北アイルランドのベルファストにあるクイーンズ大学で銀行業と銀行員について研究しているケイト・ケニーは、「先日、米国の司法長官が言っていましたが、銀行は“起訴するには重要すぎる”とも考えられています。特定の金融機関が、社会の中でこのような特別な地位に置かれている限り、一般の人々は何度も繰り返し余計な負担を強いられることになるでしょう」

このようなことが、今までどうして可能だったのか?

メガバンクの権力は明白である。その影響は各国政府の中枢にも及んでいる。実際HSBCやJPモルガンなどは、英国や米国の権力の延長線上にあるのだ。これらの銀行の頭取たちが守られているのは、資本にとって重要な金融の代理人だからである。

いかなる政府もその政治的な方向性にかかわらず、このような価値の高い戦略的で有用な人々を支持している。これが現実の政治だ。このことに気づかない限り、私たちはずっと不満を感じ、裁きを求めていくことになる。以上のような政府と銀行の行為を、反民主主義的で私たちの自由にとって本質的に危険なものであるとして抑制することで大きな流れを壊し、そして変革を達成しない限り、私たちは時間を無駄にしていくことになるだろう。

by イアン・タプリン
公益に基づき、ロイズ銀行に関する告発活動を行っている。WBUKの創設者で、公益に基づいた告発者の保護を向上するためのキャンペーン活動家。WBUKは、分野を超えた公益のための告発者の相互支援グループ。
http://www.dontbankonlloydsethics.com

訳注1:「強欲」を肯定するスピーチで知られ、映画『ウォール街』の主人公ゴードン・ゲッコーのモデルとなった。
訳注2:粉飾決算が原因で破綻した、当時米国第2位の長距離通信会社。
訳注3:エネルギー会社として始まり、その後ITや金融取引にも拡大して巨大企業に成長したが、不正取引・経理が発覚して破綻。





No.482 Global banking(銀行危機はどこへ)


オンラインリポートは、メルマガで配信1カ月後ウェブサイトに掲載します。リポートを1カ月早く読めるメルマガはこちら登録できます。





オンラインリポート一覧へ