アムネスティのセックススキャンダル
Amnesty's sex scandal
New Internationalist No.486
October 2015 p8
アムネスティ・インターナショナルが8月にセックスワーク(売春)を非犯罪化するよう提案した時、国際的な批判がわき起こった。この非営利団体によればその主要目的は、世界的にセックスワーカー(売春婦)の福祉と権利を向上し、警察や雇用主による扱い、そして保健サービスにおける対応が公平に行われるようにすることである。しかし批判者らは、セックスワークを犯罪扱いしないということは、人身売買やセックスワーカー斡旋への入口になると主張する。

この提案は、アムネスティがセックスワーカー、HIV関連機関、反人身売買団体、女性の権利やLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)の権利の活動家らと2年間にわたって相談して行われたもので、アルゼンチン、香港、パプアニューギニア、ノルウェーで実施された犯罪化による影響に関する事例研究を通じて作られたものだ。

事例研究の結果、セックスワーカーへの虐待や嫌がらせの主な理由が犯罪化されたことにあるということが分かった。虐待がたびたび警察官によって行われるため、被害報告が少なくなる傾向が見られた。また、この研究から、保健サービス、特にHIV予防に関するサービスを利用する際や、セックスワーク以外の仕事に就こうとする場合に差別を受けることが分かった。そして、最もぜい弱なグループがトランスジェンダーの人々であることも明白になった。

また一方では、「女性の人身売買に反対する連合(CATW)」が公開レターを発表し、非犯罪化は人身売買仲介者を利することになると主張した。CATWは、ドイツのオープンなセックス産業の例を挙げ、非犯罪化によって売春宿があちこちにでき、人身売買が増加したと主張。買春する側を取り締まることによって需要抑制を目指す北欧モデルの採用を提案する。

この人身売買に関する主張に対してアムネスティは、ノルウェーでは2014年でも依然として記録的な人身売買件数だったと異議を唱え、北欧モデルはセックスワーカーを地下に潜らせることになり、仕事をより危険なものにすると言う。

セックスワーカーたちは、このアムネスティのキャンペーンを支持している。「とても多くの人が、セックスワーカーに対する判断をすぐに下すのはなぜなのでしょうか……、しかし、私たちが主張することにはなぜなかなか耳を傾けてくれないのでしょうか?」「セックスワーカーのアジア太平洋ネットワーク」のコーディネーター、ケイ・チ・ウィンはこう記した。「多くの国が、セックスワーカーに対して警察力を強化しました。アムネスティの方針は、セックスワーカーの力の強化を目指すもの……、そのため、私たちの社会的、経済的、政治的、そして健康に関する問題に対して、自分たちで取り組むことができるのです」

by クリスティアーナ・モイセスク


サウジアラビアの女性たちが投票へ
Saudi women to vote
New Internationalist No.486
October 2015 p9
サウジアラビアは数々の批判をかわすため、次回の地方選挙で女性の投票と立候補を容認した。12月の選挙には、すでに70人を超える女性が候補者として届け出を済ませた。2011年からこの問題を訴え続けてきたサウジアラビアの女性の権利向上キャンペーン活動家らは、平等への重要な一歩とこの動きを歓迎した。


石炭は問題だ
Coal matters
New Internationalist No.486
October 2015 p9
オーストラリアのニューカッスル市には、世界最大の石炭輸出の積み出し港がある。同市の市議会は、同国の4大銀行を含む、環境に害を与えるすべての事業体から投資を引き揚げることを可決した。ニューカッスル市は、汚染をもたらすエネルギーの回避を決断した議会としては、オーストラリアで7番目にあたる。地元の人々は、景色を台無しにする石炭貨物列車と石炭のちりから解放され、よりきれいな町に向けた一歩として歓迎した。


子どもたちが決める方向へ(トランスジェンダー)
Where
the children lead
New Internationalist No.486
October 2015 p16-17
トランスジェンダーの子どもたちを取り巻くパニック、混乱、虐待を切り抜ける方法を、マルティ・アバーナゼーが説明する。

「うちの子どもが3歳の時、私は男の子だと思っていたのですが、すべてに対して女の子用のものを好むようになりました」、と16歳のベッカの母親キャサリンは振り返った。

「私たちは、それが一時的な状態にすぎず、影響を与えることが可能であることを望みました。私たちは診察を受け、『男の子の遊びを勧めなさい』『女の子の遊びはさせないように』と言われました」

キャサリンはそのアドバイスに従った。しかし6歳のころ、ビリーは自殺をほのめかした。

「そのため再度診察を受けました。私たちは、子どもが非常に苦しんでいることに恐ろしい気持ちになりました。ビリーはうつ状態で不安になっていると言われましたが、ジェンダーの認識について何か言われたことはありませんでした」

現在キャサリンは次のように理解している。「私たちがビリーに男の子という認識でしたことは、修復(または転向)セラピーと同じで、破滅に導くものでした。私たちの子どもは、闇の中に沈んでいたのです」。

当時は、「それが何なのかが分かるまで、自殺未遂、自傷、自己治療」が続いた。

両親は、ビリーが15歳の時にベッカに変わることを許した。

「その時から、徐々に家族としてのつながりとベッカの自尊心の再建を進め、現在ようやくありのままに彼女として自分たちの子どもを受け入れました」。

ベッカのような子どもを苦しめるのは「性別違和(gender dysphoria)」で、米国精神医学会では次のように定義している。

「性別違和は、個人の表出上、そして経験上の性別と、他人が割り当てる性別の著しい違いがはっきりしていることが少なくとも6カ月続く場合に下される診断である。子どもの場合、他の性別になりたいという望みが示され、それが言葉として表される必要がある。この状態は臨床的に見ると、社会、職業、その他重要な役割分野においてかなりの苦悩を抱える、あるいはきちんと対応できない状態を招く」[訳注]

メディアの注目と誤解

トランスジェンダーの子どもたちに対するメディアの注目は、徐々に高まっている。しかしそこには、混同、誤解、間違った情報がいまだに存在する。例えばトランスジェンダーとジェンダー非同調性は、よく同じもののように語られている。

"Gender Madness in American Psychiatry"の著者、ケリー・ウインターは、「多くの子どもたちがジェンダー非同調性を感じていますが、そのほとんどは自分の身体や出生時の性別については大きな悩みを感じていません。ジェンダー非同調性の子どものうち、性別違和はわずかな割合で、彼らは一貫して執拗に、継続的に、出生時からの性別や身体的特徴について苦悩を示しています」と述べる。

思春期前のトランスジェンダーの子どもたちに対する適切な治療法として、性別適合手術(性転換手術)あるいは異性ホルモン療法について言及している記事をしばしば見かける。

トランスジェンダー研究では世界最先端の機関であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校精神医学科のダン・カラシック教授は、「思春期前の医学的療法は不要です」と語る。

彼は次のように付け加えた。「違う性別で生きたいという欲求が思春期においても継続する場合、遮断薬(ブロッカー)を使う可能性もあるでしょう。ブロッカーは、性別の自認までの時間稼ぎをし、その間は戻ることもできます。オランダの研究によれば、思春期ブロッカー療法、思春期後期のホルモン療法、そしてトランスジェンダーの場合の手術という臨床プログラムで、トランスジェンダーの大人としてうまく適応できるようになるという結果が出ています」。

従って、性別違和の若者への診療は次のようなものになる。

・思春期前の子ども:自己を受け入れるためのセラピー
・思春期の子ども:思春期を遅らせるためのホルモンブロッカー療法
・10代後半:異性ホルモン療法

トランスジェンダーの子どもたちを真剣に支えようとする親とセラピストに対するもう一つの試練は、セラピーが子どもたちに対する実験的な試みとなることである。

この点は、今年前半のThe Spectator誌にブレンダ・オニールが寄稿している。彼の記事のタイトルは「トランスジェンダー活動家は子どもたちに事実上の実験を行っており、これほど残酷なことはないのではないか?」というものであった。(1)

オニールは、BBCのルイス・セルーが制作した米国のトランスジェンダーの子どもたちに関する概して繊細なドキュメンタリーについて反応していた。

オニールはこのドキュメンタリーを、「自分は少女だというばかげた考えを持つカミーユというピンク色が好きでレディー・ガガの大ファンという5歳の男の子のことを紹介し、もっとばかげたことは、心理学者と彼の両親による甘やかしで……」と厳しく非難。

彼は続け、「非同調性あるいは『トランスジェンダー』とする単におかしな子どもたちに対する治療は、大人が負うべき責任の驚くべき放棄として強く印象に残った。子どもたちの困惑を正し、奇妙あるいは厳しい時期に子どもたちを導くのは大人の責任だ……。しかし現在、相対主義の崇拝が非常に深く浸透しており、すべての判断の最も基本となるべき、ベニスがあるのが少年で膣があるのが少女だ、と決めることにも尻込みし、その代わりに子どもの気まぐれやたわ言に付き合おうとするのだ」と書いている。

幸福に、輝き、笑いの絶えない……

セラピーを批判する人々の中には、両親が子どもたちに対して異なる性別をどういうわけか押しつけている、と指摘する人もいる。しかし7歳のトランスジェンダーの娘をもつカミーラは、それを聞いて驚き「納得できない」と語る。

「子どものためにそれを選ぶ親はいないでしょう。それは、子どもが日々さまざまなレベルで向き合っていく必要のある苦しみです。単に名前を変えたり、スカートを着せたり、スターウォーズのパジャマを着せて人生は楽しいと背中をたたくものではありません!」

カミーラは、娘を待ち受ける将来が困難なものになるだろうことは分かっている、と言った。「思春期ブロッカー、ホルモン療法の開始、子どもを産めないこと、誰を信頼するのか、誰を愛するのか、うつの可能性、自殺のおそれ、暴力、反感、誤解、強い不安、手術。こんなことを子どものために選ぶ親がいますか? 指摘は単に、実情に関する理解が全く不足していることから来るものです……。

ジェンダー非同調性に関して批判を浴びたり、悪口を言われたり、恥辱を受けたりした子どもたちは、うつと不安での苦しみが増加する可能性があることは証明されている。

それとは反対に、米国小児科学会の学会誌Pediatricsで最近報告された研究結果によれば、性別違和が解消されたトランスジェンダーの子どもの生活状態は、同じ年齢のジェンダーに同調している子どもたちと同程度のレベルになるという。(2)

16歳のトランスジェンダーの娘を持つダウンは、このことに同意する。「当初、私たちは何もしませんでした。その状態が、さも一時的なものであるかのように振る舞い、彼女も次の段階に移るだろうと考えていました」。しかし、娘の苦しみは続き、両親はセラピーを受けさせることを決めた。セラピーは、「この問題に関して多少詳しい」専門家の下で行われたが、娘の状態は改善に向かった。そして次に、今度はセラピストでも「トランスジェンダーのクライアントへの対応を専門的に行っているセラピストに依頼しました。それは、娘が自分自身を認識することに非常に役立ちました」。

そしてダウンは次のように付け加えた。「私に分かっていることは、自分の子どもが悲しみ、意気消沈し、引きこもるような状態から、現在の幸福で明るく、よく笑う女性になったということです」。

ジェンダー非同調性の子どもを持つ親の選択肢としては、次の3つがある:

・性転換/修復セラピー
・ジェンダーセラピー
・何もしない

現在多くの人々が、性転換や修復セラピーを非倫理的と考える。しかし、依然として支持者もいる。特に、1995年に"Gender Identity Disorder and Psychosexual Problems in Children and Adolescents"[訳注:邦訳は『性同一性障害 : 児童期・青年期の問題と理解』(みすず書房/2010年)]を書いたケネス・ズッカーとスーザン・ブラッドレーである。

米国の10代のトランスジェンダーの若者で、ジェンダー修復セラピーを受けていたリーラ・アルコーンが2014年に自殺して以来、ジェンダー修復セラピーを違法化するよう求める声は一層大きくなっていった。

オバマ大統領の上級アドバイザーであるヴァレリー・ジャレットは言う。「膨大な科学的検証の結果、修復セラピーは、特に若者に実施された場合、医学的にも倫理的にも適切ではなく、重大な害を及ぼす可能性があります」。

ジャレトは続ける。「米国の若者を守るという我々の貢献の一部として、未成年者への修復セラピーの禁止を求める取り組みを、この政権は支持します」

トランスジェンダーの子どもにとって、成功と健康を手にする最良のチャンスはジェンダーセラピーである。問題を恥じたり無視したりすることは、単に害になるというだけでなく、場合によっては生死にかかわる。

もしも最終的な結果として幸福で大人としてうまく適応できるようにしたいのであれば、子ども(それと科学)が導く後に従うべきではないだろうか?

by マルティ・アバーナゼー
米国のトランスジェンダー活動家、政治戦略家、メディア活動のパイオニア。ブログtransadvocate.comで執筆、編集を行う。

(1)Brendan O'Neill, The Spectator, 8 April 2015; http://bit.ly/1O7rFbu
(2) Annelou de Vries et al, 'Young Adult Psychological Outcome After Puberty Suppression and Gender Reassignment', Pediatrics, 8 September 2014; http://nin.tl/Dutch-study

訳注:性別違和(gender dysphoria)は、日本では性同一性障害(gender identity disorder)としての方が知られている。だがこの言葉は、米国医学会が19年ぶりに改訂して2013年に発行した"Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders"(DSM-5、邦訳は医学書院発行『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』)で、それまではgender identity disorderとなっていた診断名がgender dysphoriaに変更されたことにより、日本では訳語の変更として「性別違和」が使われるようになっている。




No.486 The transgender revolution(トランスジェンダー革命と私たちの解放について)


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