市民団体スタッフが語る気候変動交渉の現実
Views from inside
the climate talks
New Internationalist No.487
November 2015 p14
「主な交渉は、誰の目にも触れることのない裏側で行われています。そこでは、外務大臣たちが本音で話しています。100人あまりの交渉者たちが、スクリーンに映るワード文書を見ながら一字一句とても細かいところまで議論をする公式交渉は、その後になります。そしてその後、政府や団体が小グループに分かれて会議や討論会を開きます。昨年リマで行われた国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)の米国ブースには、世界的な気候変動の影響を高解像度の画像で表示できる衛星技術が鳴り物入りで展示されていました。それはまるでタイタニック号に乗りながら、『船の沈没は止めないが、とても印象的なシーンを撮影するよ』と言っているようなものです」
JIM SHULTZ, Democracy Center Bolivia
http://democracyctr.org

「炭素市場を促進するためのサイドイベントに行きました。ボリビア人の女性が手を挙げ、私は彼女のために通訳を行いました。それは非常に難しい場面でした。なぜなら彼女は、炭素市場がどれほど彼女のコミュニティーに打撃を与え、自分たちの土地の権利がない人々に押しつけられているものなのかを打ち明け、仕方のないことではありますが、感情的になっていきました。しかし、イベントを運営する人々は、『分かりました。ありがとうございました。お話しいただいたことに感謝します』とだけ言い、次に進めました。彼女は泣きながら、『それは、私自身、私の人生、私のコミュニティーの人々に影響することなのです』と言いました。しかし彼女の現実は、専門的な政策官僚の議論とは合わなかったのです」
ANGELA VALENZUELA, Earth in Brackets
http://www.earthinbrackets.org

「私は2013年に、ワルシャワで行われた会議にユースの傍聴者のひとりとして参加しました。しかし、私は他の2人と一緒に、会議初日に締め出しをくらいました。それはばかばかしい話ですが、オープニングセッションのイェブ・サント(フィリピンの代表)の話の後、彼と台風ハイエンの犠牲者への連帯として、私たちはただ単純に横断幕を掲げただけなのです。しかし会議場の中で行われることはすべて事前に許可が必要でした。そのため私たちは、2週間の会期中ずっと締め出されてしまったのです」
MARIA ALEJANDRA ESCALANTE, Earth in Brackets
http://www.earthinbrackets.org

「交渉は巨大な3次元のチェスのようなものです。米国は、中国との二国間協定に持ち込もうと積極的に動いています。これは、開発途上国が資金を得るための交渉力を失わせるものです。2011年のダーバンでの交渉では、欧州連合(EU)が後発開発途上国と小島しょ国の説得に成功しました。EUは、「より大きな国々は開発について話している。君たちは生存について語るべきだ。君たちの生存vsより大きな国々が進める開発、どちらなのか?」と言いました。それによってEUは、「我々の生存と我々の開発は、どちらも我々にとって重要で、我々自身が北の国の消費に向き合うことだ」と言わずに済ませることができました。EUはとても見事にそれをやってのけたのです。これが、彼らがパリで再び作り出したいと考えている状況なのです。
ASAD REHMAN, Friends of the Earth
http://www.foei.org


「本当のパワーは現場に」:
気候正義の闘いの最前線から
(一部翻訳)
The real power is below
New Internationalist No.487
November 2015 p24-25
「実践的な解決策に加え、私たちには希望も必要です」
ANGELA VALENZUELA
チリのユース代表のひとりでEarth in Brackets所属
http://www.earthinbrackets.org

リマ会合[訳注:昨年12月にリマで行われたCOP20]に刺激された仲間2人が、炭素市場と気候変動会議の政治を批判した歌を作りました。その歌は人々に対し、黙ったままストレスをため込むのではなく、団結して声を上げていこうと呼びかけるものです。「Hombre de Papel」(「Paper Men、紙の人間」の意)というその歌は、官僚的で高度に専門的な枠組みについて歌っています。私たちはそれを国連の会議で、[国連の気候関連のトップ]クリスティーナ・フィゲレスと各国代表団の前で歌いました。歌が終わった直後ボリビアの代表者が発言しましたが、歌は彼の琴線に触れたらしく涙声で次のように語りました。「そうだ、私たちペーパーマンは、安全な未来を確かなものにするために、自分の仕事をきちんとこなす必要がある」

それはとても一体感が感じられた時間でした。その場にいた人々は、年齢、政治的な意見や取り組み方という点では大きく異なっていたにもかかわらず、音楽はみんなが同じように考えている問題の核心に届いたのです。私たちには、実践的な解決策だけでなく、違いを生み出す重要な思考と希望に対して刺激をもたらす文化的な変化が必要とされているのです。


「交渉代表者たちがちゅうちょしている一方で、一般の人々は行動を起こしている」
NNIMMO BASSEY
Health of Mother Earth Foundation(ナイジェリア)
http://www.homef.org

良いニュースは、交渉代表者たちがちゅうちょしている一方で、草の根レベルでは一般の人々が行動を起こしていることです。ホンジュラスでは、女性たちが巨大ダムに立ち向かい、対抗力をつけています。西ティモールでは、ひとりの機織り職人が鉱山企業による森林破壊を食い止めました。(*)

ナイジェリアでは、オゴニ族が1993年に自分たちの土地から石油大手シェルを追い出し、それ以来ずっと採掘阻止に成功しています。彼らは環境の浄化を粘り強く求めてきました。そして現在政府は、それについて真剣になってきているようです。

私はブルキナファソ北部で、「砂漠を止めた男」として知られるヤクーバ・サワドゴに会いました。彼は40年以上にわたり、地元の知恵と技術を用いて手作りでサヘル地帯に28ヘクタールの森を育てるために取り組んできました。手に負えない地球温暖化をストップする闘いにおいては、本当のパワーは現場にあります!
*http://nin.tl/weaver-stops-miners


「気候変動をホッキョクグマで象徴してしまうのは問題です」
HARJEET SINGH
ActionAid Internationalの気候政策マネジャー(インド)
http://www.actionaid.org

開発途上国がこれまで明確に言ってきたことは、パリを「緩和」(たとえば排出量削減)のみに焦点を当てる場にしてはならないということです。「適応」と「ロスとダメージ(損失と被害)」も同じように重要です。

これは単なる言葉遊びではありません。たとえ今すぐに排出量がゼロになり、私たちが使うエネルギーが100%再生可能エネルギーになったとしても、すでに恐ろしい量が排出されており、気候変動の影響は今後50年から100年にわたり現れます。それに対し、システム、資金、影響への対応力は、富裕国と貧困国の両方でどこにあるのでしょうか? 環境団体が、気候変動をホッキョクグマや風力発電所や太陽光パネルをで象徴してしまうのは問題です。これらのものは全容を表しているわけではありません。太陽光パネルは、私たちが影響を受ける農業、食料安全保障、住居、災害などに対処するものではありません。排出量を減らし、現地への影響に対応し、開発途上国の切なる望みへの
障害を取り除くためにも資金が必要です。


「私たちのコミュニティーの将来そのものを左右するのです」
GEORGE NACEWA
350.orgのフィジーのコーディネーター
The Pacific Climate Warriorsのメンバー
http://350pacific.org/pacific-climate-warriors/

太平洋においては、気候変動は生存にかかわってきます。私たちの多くは、大平洋島しょ国リーダーらが主張する、石炭採掘の猶予期間を設けること、そして地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度未満にすることをパリで拘束力ある合意にすることも支持しています。大平洋のコミュニティーの将来そのものを左右するのです。

また私たちは、先住民族や最前線のコミュニティーと一緒に現場でたくさんの活動を行っています。2014年には、大平洋気候戦士(The Pacific Climate Warriors)というグループで、世界最大の石炭積み出し港を封鎖し、化石燃料業界に対して直接的なメッセージを送りました。今年は、気候の危機に関連する分野に投資している人々へメッセージを送る予定です。

気候変動が大平洋諸国の生活をどのように壊していっているのか、私たちは各国を回ってその事例を集めています。それを、伝統的な敷物として織り上げ、政策決定者たちに持って行くことにしています。





No.487 Paris climate summit - Heroes, villains and why there is still hope
(パリの気候変動会合〜英雄、悪人、まだ残る希望)


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