メルマガ2016年1月号掲載↓
本当に人権を守れるの?(サウジアラビア)
SAUDI ARABIA Rights defenders, really?
New Internationalist No.488 December 2015 p7
 
国連憲章には、「すべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守」がうたわれている。だが国連は先日、サウジアラビアのファイサル・ビン・ハッサン・トラッド国連大使を、国連人権理事会の影響力を持つ独立専門家会議議長に任命することを発表し、それは新たな汚点となった。トラッドは、国連が人権関連の職務を行う国々に派遣する多数の専門家の選考を握ることになる。

NGOのUNウォッチによれば、このような専門家はしばしば人権理事会の「王冠の宝石」[訳注:非常に重要な物の意]と評される。この新たな指名によって「王冠の宝石」(人権侵害と狂気に対応する少なくとも77の職務ポスト)に関する権限は、人権状況が世界最悪レベルの国に委ねられることになる。

サウジアラビア政府は2015年、IS(イスラム国)よりも多くの斬首を行った。この国は12カ月で死刑192人という記録を持つが、それも更新されることは間違いなさそうだ。この記録は、アブドラ国王時代に打ち立てられたものである。アブドラ国王は2015年1月に死亡したが、その際には西側諸国のリーダーたちがすぐにサウジアラビアに押し寄せ弔慰を表した。

そして5月にサウジアラビア政府は、公開斬首のための死刑執行人8人を追加募集する広告を出した。

フェリシティ・アーバスノット
 
 経済に関する10の迷信:その3
「金持ちへの課税は投資家を遠ざけ経済の停滞を招くのか」
10 ECONOMIC MYTHS: Taxing the rich scares off investors and stalls economic performance

New Internationalist No.488 December 2015 p14-15
企業は繁栄をもたらし、税はそれを破壊する。これは、新自由主義が抱いている迷信である。この迷信に従えば、低い税率がより大きな繁栄をもたらすことになり、国や地域による税削減の競争が投資を呼び込み富の創出を促すことになる。

現実には、公的資金が支える教育、保健医療、インフラ、雇用策(公的資金注入は置いておいて)なしでは、企業もまったく経営は成り立たないだろう。企業と同様に、税は間違いなく繁栄をもたらしている。税金「戦争」は、税率の「最低レベルへの競争」と詐取の「最大レベルへの競争」を促進し、社会の貧困化だけでなく破壊の可能性さえもたらす。口やかましい投資家(あるいは金持ちの個人)は、ほとんどの人々よりもこのことを分かっている。彼らが生産的投資を行うのは、税率が最も「有利な」場所だけだという考え方は、ナンセンスである。

では、適正な税率や税の種類とはどのようなものなのか? これは、経済的というよりも、政治的な問いである。民主主義においてより適用されやすいのは、公正さという基本原則だ。「累進」税は、余裕がある人により大きな負担をしてもらう仕組みだ。消費税(付加価値税や物品・サービス税、あるいはこれと同等のもの)といった「逆進」税は、誰もが同レベルの負担をすることになり、累進税とは逆に働く。

よく知られているように、北欧のスウェーデン、ノルウェー、デンマークは、世界でも最も高い税率と累進的な税制を持つ国々であるが、一方で最も繁栄し成功した国々としてもよく取り上げられている。2008年の世界金融危機の時、スウェーデンでは税金が60%に引き上げられたが、世論調査によればほとんどのスウェーデン人は、その支払いには進んで応じると答えていた。(1)  累進税が景気を失速させないことは、スウェーデンに住まなくとも理解できるだろう。

新自由主義は、逆進税と詐取を生み出す。金持ちの企業と個人にしてみれば、安全な場所を巧妙に張りめぐらせたり巨大なコンサルタント業界に資金提供することは、税金を集めに来る担当者にカネを渡すよりもずっと大きな富をもたらす。最富裕層は、結局一銭も税金を払わずにすむ。実際彼らは、その他大勢(より疲弊した多数の地域企業も含む)から補助金を受け取っているようなものだ。

これらすべては2008年以降の大不況によって浮き彫りになった。政府の借金と予算不足は、税収が不十分で支出をまかなえなかったことが原因だ。不況の間は税収は減少する。一見すると、税金を増やすことは状況を悪化させるように思えるが、それは公的支出の削減も同じことである。これもまた、基本的には政治的選択だ。

評判が悪い租税回避地の英国では、金持ちの企業と個人への税率は実際には下げられてきた。一方で、付加価値税は急激に上げられた。税金戦争と逆進課税は、「緊縮」の要件として決定的なものとなった。しかしこれらは、投資の呼び水にはまったくならなかった。2014年の英国への投資は、2009年以降で最低レベルにまで落ち込んだ。(2) そしてそれはすでにEU(欧州連合)内で最も低いレベルとなっていた。また、そのレベルは、2009年から右肩下がりの状態で推移してきたものだ。(3)

新自由主義の税制は、常識ではない。そこにはいくつか異なる見方もある。例えば、収入ではなく(企業と個人を含む)民間の富に注目してみよう。トマ・ピケティの推測によれば、平均すると政府は現在富を保有していないことになる。これは、政府の保有資産が債務とほぼ同額だからである。しかし民間の資産は、民間負債の6倍に上る。ピケティは、一度限りのたった15%の「同一」税率による民間資産への課税によって、「国の1年分に近い歳入が得られ、それによって未払いの公的債務の即時返済が可能になるだろう」と述べている。(4)

ピケティは、少なくとも新自由主義が広がっている間は、このような課税がすぐに実施されるという期待は抱いていない。これは、金融投機に対する「取引」税や為替取引に対する「トービン」税に関しても同じことが言えるだろう。これらの税には、金融による破壊的行為を抑制するという副次的恩恵も見込めるだろう。そしてどちらも、いつまでも続く経済問題を解決する一助となるだろう。

現実主義的な見方のひとつに、より良い公正な税制の将来については実現の可能性は高くない、とするものもある。また別の現実主義的な見方では、新自由主義の税制は迷信とプロパガンダに依存している、というのもある。実際には、それほど高くない税率を富に課税すれば、大不況を解消するに十分な資金が得られるだろう。それは、口やかましい投資家でさえも満足させる結果につながるのではないだろうか。

デビッド・ランソム

(1) The Guardian, 16 November 2008.
(2) The Guardian, 15 February 2015.
(3) European commission, ‘Investment in the United Kingdom’, http://nin.tl/UK-investment
(4) Thomas Piketty, Capital in the Twenty-First Century, Harvard University Press, 2014.


 

メルマガ2015年12月号掲載↓
うれしい話:銃器店ゼロを達成
Reasons to be cheerful: Gun shop gonethe climate talks
New Internationalist No.488 December 2015 p9
サンフランシスコで銃を販売していた最後の店が閉店した。ゼネラル・マネージャーのスティーブン・アルカイロは閉店に関して、店に反対する多くの人々とより厳しい銃規制に対して不満を漏らした。昔から銃に反対してきた町にとって、これは歓迎すべきニュースだ。この町では、2005年に銃の販売と所持が禁止される可能性があったが、全米ライフル協会の提訴によって実現しなかった。


うれしい話:カーボンニュートラル都市への競争
Reasons to be cheerful: Carbon-neutral city race
New Internationalist No.488 December 2015 p9
いくつかの自治体で、最初のカーボンニュートラル[訳注]都市として名乗りを上げたいという意思が表明されている。メルボルンやバンクーバから、最近表明したアデレードまで、すべての都市が排出量の実質ゼロを2020年(コペンハーゲンは2025年)までに達成することを目指している。そのステップとして例えばアデレードは、低炭素への投資を70億ドル集めること、コペンハーゲンは2016年に2万3000本の木を植えることを目標に掲げている。

訳注:二酸化炭素の排出量と吸収量が差し引きゼロであることを言う。例えば植物由来のバイオマス燃料は、燃やしても植物として吸収した二酸化炭素を放出するだけなので、吸収量と排出量が同等と考えられる。また、自然エネルギーや森林などを吸収源として考え、人間活動から排出される二酸化炭素と均衡させた量をまかなえる時もカーボンニュートラルと考える。


経済に関する10の迷信:その10「成長は唯一の道である」
10 ECONOMIC MYTHS: Growth is the only way
New Internationalist No.488 December 2015 p26-27
2008年の大金融危機の記憶をぬぐいきれない中で、経済学者、政治家、メディア、そして一般の人々も、回復の兆候を探し続けている。それは、経済成長の持続という姿をしたものだ。安定することや考え方ではなく、やはり語られるのは成長である。拡大する経済イコール活発な経済であり、その恩恵は仕事と繁栄につながるというのが理屈だ。従って、希望的楽観主義によって、成長のあらゆる兆候一つ一つが捕捉される。「事態はようやく好転したのか?」

しかし、1900年から2008年の間に、世界の人口は4倍になったが、1人あたりのGDP(国内総生産)は6倍になった。だがもし、GDPの増加を世界全体(人口増加とインフレの影響も加味する)として見れば、GDPは25倍以上の増加に跳ね上がる。(1) 

そこで当然頭に浮かぶ疑問は、この大きな波はすべてのボートを持ち上げてくれたのか、ということだ。きわめて基本的な項目、例えば識字率や妊産婦死亡率などにおける成功を除けば、これまで何度も聞かされてきた構図が依然として存在する。つまり、ご褒美を受け取ったのはわずかな人々で、圧倒的多数の人々の状態は相変わらず、あるいは悪化しているというものだ。

成長の世紀を経た現在、9億2,500万人が十分な食べ物もなく、そして世界の人口のちょうど半分弱の人々が絶対的貧困状態で暮らしている。これらの不幸を終わらせるのに十分すぎるほどの富が生み出されてきたにもかかわらずである。(2) だが、伝統的な経済学者らは、成長という呪文を繰り返している。世界銀行と国際通貨基金(IMF)の両方の機関で働いたことのあるアン・クルーガーは、次のように主張する。「貧困削減は、ケーキの切り方を変えようとするのではなく、ケーキ自体を大きくすることによって達成される」。(1) そうであれば、経済成長が不平等を変える影響力を持たないことも驚くにあたらない。

雇用は右肩上がりに拡大するとの期待があるかもしれないが、むしろ不規則に変動している。現実では、生産性を上げる新技術がより大きな利益を生み出しているが、雇用を見ると拡大というよりもむしろ縮小している。

GDP増加のみに重点を置いてその他の物事の負担増を顧みないことは、資源の無駄を生む。それは特に比較的豊かな国々によって、比類なきスケールで、過去の反省もなく起こる。経済は生態系システムに含まれる一部分であるとしばしば指摘されるが、私たちは自然について、包容力があり、人間のどんな営みでも吸収してくれると考えている。

しかし、グローバル・フットプリント・ネットワークによれば、私たちは生態系に対して危険なレベルの負債を抱えている。現在、年間あたりの地球での資源消費と廃棄物は、地球が1.5個ないと維持できないレベルとなっている。この過剰分の代償は生態系の危機(森林、漁業、淡水、気候システムを考えてみよう)として現れ、不公平なほど大きなしわ寄せは受けるのは、やはり貧困層である。(3)

さらには、資源の採掘が以前よりも困難になるに従って、伝統的経済学の考え方の柱となってきた限界なき成長という作り話を維持することが徐々に難しくなってきている。

しかしながら、私たちの頭にこびりつく成長への強迫観念に対処し、より持続可能な経済の構築に取り組むための議論は、景気を後退させるつもりなのかと、いつもあざけりの対象となってきた。しかし、一定レベルで変動なく落ち着いた状態にある横ばい経済は、環境の崩壊を招かず、消費文化支持者にも知られていない恩恵をもたらす。焦点とすべきは、より大きな公平性、再分配、生活の質、例えば仕事の分担と意義深い仕事、余暇時間の価値と人間としての生きがい、住居の豪華さではなく住む場所のある安心感などである。言い換えれば、それはバランスだ。資源を浪費せず、リサイクルが最適化された足ることを知る経済である。

これには、私たちが常識として信じ込まされているすべてを考え直す大幅なパラダイムシフトが必要である。だが、横ばい経済の達成方法を考えるために必要な、生態系の視点からの経済的思考は、依然として完全に隅に追いやられている。裕福な国々の私たちは、それがたとえ愚かな競争であることを自覚していても、あふれかえる物を減らすことが競争に負けることであり、それにおびえているのだ。私たちが、住居に関するとんでもないレベルの不安定に耐えているのは、それが価値の押しつけにうまく利用されていたとしても、「それが市場のやり方だから」である。そして私たちは、徐々に不透明になっている成長の証拠として、借金まみれの消費支出を後押しする。(4)

もし、多くの富裕国が切望する3%の成長率が達成されれば、各国経済は23年ごとに倍になっていく。つまり、直近の1期間(23年間)の消費だけで、それより前のすべての期間における消費の合計を超えることになる。これは、持続可能と言えるのだろうか?

しかし政治家は、成長への追求に疑問を呈することは、わずかな勇気ある緑の党の党員を除けば、選挙での致命傷になると見ている。現在の状況を見れば、成長に明日はない。

ディンヤール・ゴドレイ

(1) Rob Dietz and Dan O'Neill, Enough is Enough, Earthscan, 2013.
(2) Figures for 2010, supplied by the UN, http://nin.tl/UNpoverty
(3) Global Footprint Network, http://nin.tl/world-footprint
(4) James S Meadway, 'The dangerous consequences of debt-led growth', nef, 9 April 2014, http://nin.tl/debt-growth



No.488 10 economic myths that we need to junk(もうさようなら経済10の迷信)


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