経済危機において庶民がとる
イニシアティブ
Funny Money
Street level initiatives in the economic crisisi

(New Internationalist No.342
January/February 2002 p8)

4年に及ぶアルゼンチンの長期経済不況が、今や完全な経済危機に移行した。銀行救済策として、預金引き出し額を週250ドルまでに制限した昨年12月の政府決定に怒った中流階級の人々は、いくつかの主要都市で行われた失業者や貧困層の人々による大規模な集会に加わった。首都ブエノスアイレスでは、町の中心マヨ広場に集った参加者に向けて、連邦警察が催涙ガスやゴム弾を使用。おおむね平和的で自然発生したデモに対し、政府は厳しい反応を示し、市民27名が死亡、数百人もの負傷者がでた。

そんな騒ぎの中、アルゼンチンが1,320億ドルの対外債務のデフォルトに陥り、このまま経済崩壊が続けば、1991年以来ドルに対して固定相場制をとってきた自国通貨ペソもその影響を避けることは難しい。IMFが課した緊縮財政は、少なくとも18%とされる失業率を引き起こした。経済状況は日ごとに厳しくなり、人口の約半数が貧困ライン以下の生活を強いられ、保健サービは崩壊寸前である。政府が超インフレを許容するのかどうか、国の黒幕達が静観しており、小売業界や銀行はボロボロの状況である。

デ・ラ・ルア大統領が辞任した2001年12月20日から2002年1月1日にかけては、街中よりも国家機能の混乱の方がひどかった。国内に平静と秩序を取り戻すことより正義党内の内紛が優先されているとして、5人の国政の長が次々と辞任した。かつては左派軍人とスラム住民の領分とされていた政治支配層への嫌悪が一般の人々にも広がり、デモが続いた。

行政諸機関に社会問題を扱う能力がないと判明した一方で、いくつかの非政府機関は、機能麻痺に陥った政府の公共サービス機関から置き去りにされた空白を埋める活動を景気後退の中担っていた。これらの活動には、現金を伴わない取り引きやマイクロクレジット(少額融資)が含まれている。

貧困と闘う全国連合(FNCP)は、新自由主義モデルは700万人に雇用問題、1400万人に貧困問題、そして何万もの中小企業に倒産をもたらしたと主張し、失業中の世帯主に380ペソ(380ドル)、子供1人につき60ペソの支給を提案している。12月の半ばFNCPは、アタック-アルゼンチーナ(訳注1)と共に、全セクターが貧困と闘う緊急資金を政府に訴えることのできる「民衆の相談会」の開催を提案した。この直接の訴えは憲法に正式に記されており(使ったことがないとしても)、ウルグアイでは同様の国民投票が民営化を制限するのための助けになった、とFNCPは述べている。

マイクロクレジットはスラムにも登場している。ブエノスアイレス大学の経済学講師マルタ・ベカーマンは、首都周辺の貧民街でマイクロクレジットプロジェクトを実行したアバンザーというグループを率いている。Fundacion de la Banco Ciudadを通じ融資される200ドルから300ドルの資金を、テイクアウトの食品店から美容室に至る様々な小規模ビジネス開業支援に利用している。この計画を2000年6月に開始するため支援を行ったベカーマンは、「創出されているビジネスの質をトレーニングによって向上させること」を期待している。政府は「まったく何の援助もしていない」と、彼女は語る。

物々交換も盛んである。実際には色々な原因があるが、ブエノスアイレス州政府が職員に給与として金の代わりにパタコン(訳注2)を支給したことで取引はブームとなった。首都周辺にある30ほどのノード(取り引き市場)には、食料品、家電製品、家具、また掃除や散髪などのサービスを交換するために何千人もの人々が集まる。4,000万ドル相当の取り引きが、こうした交換市場で行われていると推測されている。ブエノスアイレスの中心にあるノード11で物々交換をしているシルビアは、貧民だけが交換市場を利用しているのではないと話す。「かつて豊かだった家から出される物品をよく目にします。中には社会の評判を落としたくないため、メイドを交換市場に行かせる家もあります」


訳注1: ATTAC(Association for the Taxation of financial Transaction for the Aid of Citizens)は、市民を支援するために金融取引への課税を求める団体。
訳注2: 州債の一種で、通貨ではなく州が発行する債券。1年後にパタコンを州立銀行に持って行けば、7%程度の利息をつけて現金に換えることができる。


文: Chris Moss  訳: 松並敦子


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