農業問題の解決法
-世界の農民はどうやっているの?
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Farming Solutions
(New Internationalist No.353
January/February 2003 p30-31)

農業には様々な問題が昔からつきまとっているが、独自の知識と手段を使って、世界の農民達は問題解決を図ってきた。


南米

ブラジル: 森の中の島

・森林破壊の爪あとが広がるブラジルはサンパウロのポンタ・ド・パラナパネマ。そこには、3万5千ヘクタールの広さを誇るモッロ・ド・ディアボ州立公園がある。その州立公園の絶滅危惧動植物を救うため、コミュニティーによる植林が活気付いている。動物、鳥、樹木、草花、昆虫が段々と少なくなっている主な原因のひとつが、森が寸断されることによる各動植物種の孤立である。現在コミュニティーの土地無し労働者運動(MST)の農民は、大学、NGO、森林研究所の人々と共に、アグロフォレストリー避難所となる場所のネットワーク作りを進めている。キャッサバ、トウモロコシ、豆類、数種類の絶滅危惧植物を一緒に植え付けるこのアグロフォレストリーの「島」は、植物が混生するきっかけを与え、農民にも利益をもたらす。植物種が多様化することにより、害虫を防ぎ、樹木による日陰は土壌に栄養をもたらし、保水能力も高まる。これらはすべて、より一層の収穫向上を約束するものとなるのだ。

アルゼンチン: ミミズの住む町
・アルゼンチンで3番目に大きい都市ロザリオ。この町にある貧しい地区では、カリフォルニアのレッドワームというミミズを使って町の生ごみ処理を行っている。経済危機によって失業率が上昇し、町への人口流入が続く中、人々は以前にも増してその食料と収入を都市部での農業に頼るようになった。生ごみを土の入った大きな容器の中に混ぜ、ミミズに食べさせる事により、それはすぐに菜園に適した高品質の土に生まれ変わる。このミミズ養殖システムを導入したエドゥアルド・スピアージの推測によれば、数千人がごみ拾いで生計を立てている。ミミズが導入される以前、生ごみはただ捨てられていた。しかし現在、この方法は受け入れられ、コミュニティー中に広がっている。


アジア

ラオス: もち米の国
・47の民族グループが住むラオス。ここでは4千品種にも上る米が栽培されている。この数に匹敵する品種を栽培する国は、世界でも他にはインドを置いて見当たらない。ひとつの村や、時には一家族で、12品種あまりの米を栽培する事もある。ほとんどは伝統的で有機的な手法で栽培されている。この驚くべき数の品種が残っている理由のひとつとして、かつてラオスでは緑の革命が不発で終わったことが上げられる。ラオスの人々はもち米を好むため、緑の革命によって作られたもち米でない高収量品種の米は見向きもされなかった。また1970年代、孤立主義の共産主義政府は、新品種のタネの導入を以前にも増して制限した。農薬の販売は少なく、機械化もあまり行われなかった。ある農民はこう語った、「これからも水牛を使って耕していきたいね。糞は作物にとって良いし、子牛は市場で売っていくらか収入を得ることもできるし、耕す以外にも色々とメリットがあるからね」

日本: 自然の力に任せる
・今から50年前、福岡正信は彼の父が待つ山間の農地に戻った。彼は大病を患ったことから修行を考え直し、戻る決心をした。しかし彼の修行も無駄にはならず、禅の考え方に基づいた農業手法として実を結んだ。「何もすることなく、しかし聡明に物事を行う」不耕起、無除草、無肥料、適度な堆肥、不剪定、そして化学物質も使わない。彼の採った必要最低限の方法は、労働時間を従来の5分の1にまで減らした。しかし、通常のもっと資源を使う方法と較べても、彼の方法は遜色ない収量を上げることに成功している。この方法の中心になるのがタネ団子である。彼は、「私達がすることは、様々な種類のタネを粘土団子の中に入れて蒔くだけです。そして後は何もせず、すべてを自然に任せるだけなのです」と説明する。この方法は、今では乾燥した場所に植物を植えるために広く行われている。そして、「自然農法・わら一本の革命」という彼の本は、世界中の栽培者のバイブルとなっている。

フィリピン: 科学者としての農民
・1985年フィリピンの農民達が、「開発のための農民と科学者連合(MASIPAG)」を結成した。彼等は、緑の革命によって導入された米の栽培に必要な化学製品とタネへの依存を懸念して立ち上がったのだ。MASIPAGは、この依存を断ち切り、地域のエコシステムに適応させた地域品種を使うことによって、農民の社会的な力をつけることを目的として活動している。1999年MASIPAGは、484の農民グループを擁し、20,864人の農民達が1万7,165ヘクタールを耕すまでになった。この運動により、農民達はタネを自分達で管理し、彼等の知識をもとにした持続可能な農業手法を探ることができるようになった。そしてこれは、持続可能な農業を実践するための無視できない政治力ともなったのだ。

バングラデシュ: タネが中心
・バングラデシュでは、10万を超える農家世帯が「新農業運動(Nayakrishi Andolan)」に関わっている。彼等は、伝統的な品種の「コミュニティータネ資源センター」というタネ銀行を設立し、タネの交換を行い、商業種苗をまったく利用せずにすんでいる。これは、自給を保つと共に、世界の農業資源の生物多様性をも維持することになる。新農業運動の女性達のスローガンは、「タネは自分達で保有しよう」である。コーディネイトを行う団体UBINIGのファリダ・アッターは、「現代の農業は、高収量と流行にしか目を向けていません。私達の農業は、タネを育てるということに目を向けています。重要な資源は現金ではなく、農民の知識なのです」
出典:Seedling, July 2002, GRAIN Publications.

中国: 連綿と続く農業
・先祖が行ってきたと同じように、中国南部シーサンバンナのジーヌオ族の人々は、今でも食料と薬を熱帯雨林から集めてくる。現在シーサンバンナ熱帯植物園では、どの植物や菌類が地元の市場で売れるのかを調べている。人気のある品種は、収穫量を増やし、収穫時間節約のため、自家菜園にて栽培する。絶滅危惧品種保存のため、地域の人々と共に活動する熱帯植物園のグ・フィジュン園長は、「人々とその知識が農業植物品種を生み出し、そしてまた、相互依存する全体的なシステムを構築してきた」と語った。ほんの数シーズンで森から採取された野生のタネが人工的に育てられ、今までなかったような特徴を見せるようになる。これが農業の夜明けの第一歩となった道程である。


アフリカ

マダガスカル: やり方変えて米の増産
・マダガスカルでは、ある増産方法が採り入れられ、新品種や化学肥料の導入なしで米の収穫量増加に成功している。研究者とNGOにより開発されたこの方法は、今まで行われていた米の栽培方法をほんの少し変えたものである。通常苗は、1ヵ月間苗代で育ててから田植えを行うが、この方法では、約10日で田植えを行う。また、今まで3〜4本の苗を一株として植えていたのを1本ずつにし、スペースを確保して根がしっかりと育つようにする。田んぼに張る水は数センチと浅くし、稲刈りの1ヶ月前には水をすべて抜いてしまう。そうすることによって、根によく酸素が供給されるようになる。堆肥を使用し、雑草は生えてくる前に手動の耕耘機を使って取ってしまう。この方法により収量は劇的に増加し、同じ地域で比べても、従来方法の2〜7倍の収量を誇るようになった。

チュニジア: オアシスの緑化促進
・サハラ砂漠、マトマタ山地、そして海にも囲まれたチュニジアのチニニオアシス。今このオアシスが、地元の人々の手によって生まれ変わろうとしている。これは、1994年に地元の人々によって結成された「チニニオアシスを救え(ASOC)」という団体による活動だ。汚染、水使用量の増加、土壌の疲弊によって、何年もの間オアシスの質は低下する一方だった。その土地は、都市化によってばらばらに寸断され、農民の高齢化も進んでいる。しかし今、オアシスでは有機農業が行われ、生ごみは堆肥として再利用され、この方法については学校でも教えられている。地元では、自家菜園を作り農業の生物多様性を保つこと、そして、羊・ヤギ・蜂による畜産プロジェクトが奨励されている。

ケニア: 害虫退治に2種類の植物
・ニカメイチュウ(Stemborer)はケニアにいるガの幼虫である。この害虫は、寄生して根を食い荒らすゴマノハグサ科の植物(ストリガ)のように、トウモロコシやコウリャンに甚大な被害を及ぼし、時にはほとんど作物が収穫できない場合もある。この問題への対策として、昆虫生理学生態学国際センター(ICIPE)は、独創的なシステムを考案した。まずネピア草かスーダン草を農地の周りに植え、ニカメイチュウをその匂いでひきつける。すると、その背の高い草から分泌される粘着性のある物質に害虫は捕らえられる。また、この草は、家畜の飼料としてとても優れたものでもある。そしてもうひとつ、ニカメイチュウを寄せ付けないよう糖蜜草と銀葉デスモディウムを作物の間に植える。このデスモディウムは、ストリガの生育を劇的に妨げ、侵食作用も防ぐ。このように、ニカメイチュウを寄せ付けない作物とひきつける周辺部分の作物を組み合わせることにより、今まで以上の収穫が保証されるようになるのだ。


ヨーロッパ

ドイツ: 温帯のアグロフォレストリー
・アグロフォレストリーは、通常熱帯地方で行われるものと考えられている。それはひとえに、日光の増加や気温の上昇がなければ樹冠下の植物栽培が不可能だからである。ドイツでアグロフォレストリーを実践するハロルド・ヴェディッヒは、何年もの間研究を続け、温帯気候のヨーロッパに適したアグロフォレストリーの方法を開発した。彼が開発した方法は、自然の森の周縁部に似せ、円形ドーム状に木々を植えるものだ。
 この方法では、果物やナッツの木の替わりに、ベリー類や野菜が使われる。「この方法はほとんどどんな植物を使うこともできるので、ここで植物名を上げて限定したくはないのです」とハロルドは強調した。「その選択は、気候、標高、土壌のタイプに大きく左右されます」総合的で小型のシステムは、コミュニティーの参加や知識の創出という社会的な利益をも生み出す。ヨーロッパ各地のコミュニティーでは、迅速にこのアイデアを採り入れ、すでにルーマニア、ドイツ、オランダでプロジェクトが行われている。


追加情報

http://www.farmingsolutions.orgは、オックスファム英国、グリーンピース英国、ILEIAによって立ち上げられた。このサイトは、「エコロジーの視点や社会性という観点から満足のいく農業システムは、ぜいたくなものではなく必要なもので、それは飢餓への対策としては最も効果的な手段である」ということを実証するために世界から様々な例を取り上げ紹介している。

http://www.grain.org/gdでは、GRAINの「多様性を育てるプロジェクトGrowing Diversity Project」は、農業の生物多様性を保つために率先して行われている草の根活動を世界から紹介している。

 



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