電力民営化のつけ
Power splurge
(New Internationalist No.355
April 2003 p25)


えこひいきがはびこるフィリピンで、電力民営化が消費者に負担を強いる理由を、マイテット・ディオクノ・パスクアルが報告する。

2001年5月、フィリピンのグロリア・マカパガル・アロヨ大統領は、電力産業改革法案(EPIRA)を承認した。アロヨ大統領は、国有電力公社(NPC)の分割により電気料金を値下げすると約束した。NPCの独占は破られるだろうと彼女は宣言し、NPCは民間企業へ売却された。この法案は1997年に初めて審議されたが、法案可決までの道のりは長かった。それは、民営化推進派ロビーグループによる主張(この法案は専門家以外には「難し過ぎる」というもの)にもかかわらず、広い基盤を持つグループ「フィリピン債務からの解放連合(FDC)」の精力的なキャンペーンが功を奏した結果であった。

だが結局NGOグループは、強力なエネルギー業界ロビー(ビジネスエリート混成グループ、多国籍電力企業、腐敗した政治家、政府官僚、国際通貨基金(IMF)やアジア開発銀行(ADB)のスタッフによって構成される)の影響に打ち勝つことはできなかった。IMFとADBは、法案に対してゴーサインが出ない限り、10億ドルにもおよぶ貸付を凍結すると2000年になって脅しをかけた。法案を可決させるため、少なくとも1回は議員達に賄賂が贈られたという。野党議員2人は、前エストラーダ政権時代に1万ドルの賄賂を受け取ったことを認めた。IMFとADBを始めとする権力者達は、そんなことには耳を貸さなかった。露骨な汚職や抗議活動にもかかわらず、またその法案が電気料金引き下げに有効なのかも不明な状況のまま、法案は可決されなければならなかったのだ。

債務からの解放連合は、消費者が民間発電業者救済のための犠牲になっていると明確に主張する。このグループは、公にできないような電力買い上げ契約(PPAs)の実態と、法外な電気料金(アジアでは日本に次いで2番目)の関係を暴いた最初の団体である。

新しい発電所建設の投資を呼び込むため、(世界銀行他からの圧力により)政府は新規参入者用価格を設定することを市場に対して保証した。電力公社が民間発電会社から電力を買取る時、その支払いはドル建てと義務付けられたが、買取った電力の需要があるか無いかは関係ない。つまり、国がその電力のための市場を事実上約束するものなのである。現在フィリピン人は、しばしば総支払額の半分にも達する特別なPPA「調整金」を通常の電気料金に上乗せして払っている。さらに、国営の電力供給システムの民営化を進める最近の法案は、それに伴う負債を民間企業に負わせないことをも含んでいる。従ってフィリピンの納税者達は、これからもその負担を背負い続けて行くことになる。

債務からの解放連合が要求するのは、電力産業「所有の民主化」である。その主張は、発電と供給施設所有の機会を消費者が与えられるべきであるというものだ。結局消費者が本当の資金の源であり、彼等がPPAの負債を負わされる。消費者による所有は、少数の親族による独占支配を打ちこわし、海外企業による支配集中を防ぐ。

アロヨ政権は、民営化がきちんと機能するまでには時間がかかるため、それまでは我慢が必要だと述べている。しかし、フィリピン人達は、当然疑いの目を向けている。政府の盲信によるつけを将来に渡って支払わされるのは彼等フィリピン人なのだ。

Maitet Diokno-Pascual
経済学者で元「債務からの解放連合」代表。
34 Matiaga St, Central District, Quezon City, Philippines.



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