殺しとビジネス
民間軍事サービス企業と平和維持活動

Making a Killing
(New Internationalist No.367
May 2004 p22-23)

民間の軍事サービス企業は、自らをアフリカでの人道介入の未来の形と表現する。しかし、そのカネ目当ての行動に別の側面を指摘する声もある。アンドレ・ヴェルロイがこの問題にメスを入れる。


1998年11月、革命統一戦線(RUF)の反政府勢力は「皆殺し作戦」(Operation No Living Thing)のもと、人の首をはね、略奪や殺戮の限りをつくしていた。士気を喪失し、装備もままならぬシエラレオネ軍を支えたのは、西アフリカ諸国平和維持軍(ECOMOG)の旗をなびかせたナイジェリア軍と、RUF攻撃のために定期的に急襲を仕掛ける武装用ヘリコプターに乗ったわずかな南アフリカの傭兵たちであった。首都フリータウン上空には、機体に米国旗が描かれた2台の大型輸送用ヘリコプターが旋回し、ナイジェリア部隊の支援にあたっていた。

このシエラレオネを守ろうとするアメリカの小さな支援は、インターナショナル・チャーター・インコーポレイテッド・オブ・オレゴン社(ICI)によって行われた。ICIは、通常の米軍部隊が関与するにはリスクが高すぎる好ましくないと思われる危険地帯に入る契約を米国政府と結んでいる企業の1つである。ICIにとってフリータウンへの派遣はビジネスであるが、一方でアメリカの外交政策を推し進めることにもつながっている。特に米国が恐れていたのは、石油の豊富なナイジェリアが、紛争やRUF(リベリアのチャールズ・テイラー大統領が支援する)によって不安定になるのではないかということである。ICIは、特に危険なリベリアとハイチにおける平和維持活動への援助を行い、ナイジェリアでの米軍の軍事訓練プログラムの支援も行った。

変わりゆく戦争の性質

ICIの派遣は、軍隊の外注化と協力者による外交政策推進という世界的な傾向の現れと言える。こうした動きは、防衛費が削減され、失業軍人が自分の持つ軍事能力を民間セクターに売り始めた冷戦終了以来、より一般的になってきた。調査報道者国際協会(International Consortium Investigative Journalists)の調べでは、世界110カ国で、少なくとも90の民間軍事サービス企業(PMC)が活動している。こうしたPMCは、紛争地帯での訓練、諜報、後方支援、戦闘、警備を含む、かつて国家の軍隊が行ってきた任務を提供しており、これはおそらく戦争の性質の変化を示しているのだろう。その企業の大半は、米国、英国、南アフリカに本部を置いているが、仕事の舞台は紛争に苦しむアフリカの地域が中心である。

世界の政府はPMCのおかげで、難しい状況に置かれている地域でも、距離を保ち「もっともらしい言い訳」を並べながら政策を進めることができる。

南アフリカのエグゼクティブ・アウトカムズ社と英国のサンドライン・インターナショナル社が、1990年代半ばに資源豊富なアンゴラ、シエラレオネ、パプアニューギニアで問題をはらむ介入を行った後から、PMCに関する論争がわき上がった。「カネ目当てで戦う者たちは、我々の目的にとって忌まわしい存在だ」と1999年10月に語ったのは、当時インターナショナル・アラートという援助組織の代表であったジャッド卿である。彼は、シエラレオネの和平交渉の際、外部からの関係者の存在が大きな障害の1つだったと主張する。

エグゼクティブ・アウトカムズ社がシエラレオネに介入したことで、RUFは交渉のテーブルにつくことを余儀なくされ、民主的選挙につながった。しかし、その雇われ仕事人たちが引き揚げて平和協定が調印された半年後、軍事クーデターが起きて民主的に選出された政権は追放された。

PMCの台頭はいくつかの問題を作り出している。2003年、『Policy Review』誌の「平和維持株式会社」という記事の中でP.W.シンガーはこう語っている。「平和維持を民間に委託することについて今後危惧されることは、一般の契約やビジネスの外注化が持つのと全く同じ問題である。雇われた企業は、料金をふっかけたり、人員リストを水増ししたり、失敗を隠したり、手抜きをしたりする誘惑にかられている。今、人の命と直結する安全保障の分野に、この全ての問題が持ち込まれているのだ」

シンガーは、PMCの擁護者にもかかわらず、説明責任の喪失に深い懸念を抱いている。「軍事サービスを提供する企業は、最も気の合う仲間を探しているのではなく、当然のことながら実戦で役立つ人材を採用する。例えば、悪名高く無慈悲なソビエトやアパルトヘイト政府の軍隊に所属していた元軍人の多くが、この産業に従事しているのが分かっている。過去において、彼らは人権などお構いなしに振る舞ってきたが、きっとまた同じことをするだろう。いずれにしろ、この産業に平和維持という文化が十分に浸透しているとは言い難い」と指摘する。

2000年には、かなりの契約を受注しているディンコープ社のスキャンダルが発覚した。年間契約料1,500万ドルでディンコープ社が請負った、ボスニアとコソボでの後方支援事業に派遣した2人の従業員は、彼らの同僚数人が共謀して女性や子供の人身売買にかかわったことを暴露した。その後ディンコープ社は、会社としてそのような行為を許すことはできないとし、告発された者を解雇したと発表した。

民間兵士への委託

傭兵は、ジュネーブ条約第47条で正式に禁止されている。傭兵についてこの条約では、個人の利益のみを目的とし、自国のかかわらない武力紛争のために採用された個人であると定義している。しかし、現代のPMCのほとんどはこの定義にあてはまることはない。彼らは、彼らが交戦することはほとんどなく、合法かつ国際的に認められた政府に対してのみ軍事技術を提供していると主張する。

「ゴマのルワンダ人の難民キャンプで、兵士と難民を引き離すために訓練された軍人が必要となった時、民間企業を雇う可能性について検討したこともあった」と、コフィー・アナン国連事務総長は1998年6月に語った。アナン氏は、最終的にこれに反対し、「世界では、平和を民間企業の手に委ねる用意が十分ではないようだ」と発言した。これは、国連がPMCの存在を受け入れたようにもとれるが、企業が基本的な後方支援以上の活動に関わるのを好ましく思っているものではない。ところが、国連のある上級職員が匿名という条件でこう話した。「国連の活動は、これら民間企業の助けなしでは成り立たない」

PMCが急速に台頭しているのは、アフリカ中の紛争地域に進んで介入していく意志が、国際社会に欠けていることも要因にあるのではないかと見る向きもある。レフュジー・インターナショナルの平和維持専門家ピーター・ガンツ氏は「組織的で大規模な暴力」の犠牲者を保護するという誓いは、やがて人々の胸に訴えてかけていくだろう。だが、PMCの説明責任に関しては色々と問題がある。「平和活動のための戦闘に民間企業が利用されていようがいまいが、世界中でこうした企業が盛んに活動しているのは事実なのだから、それは規制されるべきである」
 

アンドレ・ヴェルロイ
米国のThe Centre for Public Integrityのスタッフ
http://www.publicintegrity.org/

PMCに関するさらに詳しい情報は、The Centre for Public Integrity のMaking a Killing: The Business of War 2002を参照。

訳: 松並敦子

 

 



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