2008年1/2月合併号

NI No.408 & NIジャパン No.96

テロと拝金主義で後退する世界の人権
Human Rights in a time of terror

  2008年、世界人権宣言は60周年を迎える。そしてまたこの年、甚だしい人権侵害で知られる中国で、オリンピックが開催される。これまで人権を擁護し、60年前には世界人権宣言の起草に携わった同じ国々が、現在では人権よりも何よりもテロとの戦いが優先されるとの決定を下している。これまで何年もかけて苦労して改善されてきた人権の状況は、ここにきて思いがけないことに後戻りしている。今までも真剣な取り組みと行動が不十分であった社会的、経済的な権利にいたっては、テロとの戦いが優先されているために、いまや全く顧みられることもなくなってしまった。人権に関する国際的な「仕組み」が、かつてないほどたくさんつくられているようではあるが、人権に吹く逆風は非常に強いものだ。

今月のNI & NIジャパンでは、そんな困難な状況を世界各地から報告するとともに、困難に立ち向かって人権擁護のために目を見張る活動をしているグループを紹介する。

 

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● NI No.408 目次 ●


(本文は英語です)


*<NIJ>の表示がある記事は、NIジャパンに翻訳が掲載されています。


2 読者の声

4 テロへの不安と今日の人権状況<NIJ>
今日、ビジネスという名の拝金主義が人権向上を妨げている。そしてまた、テロとの戦いというえたいの知れない考えと実践が、人権をふみにじっている。テロへの不安と拝金主義に包まれたこの世界でおびやかされる人権の状況を探る。

7 「権力への執着を打ち負かす愛情の力」〜政治的権利<NIJ>
混沌とした社会的・経済的・政治的な状況が続くジンバブエ。そんな中にあっても、連帯と非暴力で権力者に立ち向かう市民団体の行動と主張について紹介する。

8 人権向上へ急げ
ダン・ジョーンズによるイラスト。

10 オリンピックは中国の人権状況を改善できるのか<NIJ>
国際オリンピック委員会(IOC)がオリンピック開催地として北京を選んでから7年が過ぎた。開催地決定にあたりIOCは、人権状況の向上に取り組むよう中国にくぎを刺し、北京オリンピックが中国の人権状況を改善するきっかけになると期待した。果たして北京オリンピックは、IOCの思惑通りの役割を担うことができるのだろうか。

11 メダルにはほど遠い中国における人権<NIJ>
中国の人権の現状についてリポートする。

12 個人の幸福とは〜性的権利
極右、キリスト教、ネオナチなど、同性愛者にとってポーランドとラトビアは決して住みやすい安全な国ではない。しばしば暴力に遭いながらも、同性愛の人々は性的権利を求めて闘っている。

13 中絶で生きられたはずの母の訴え<NIJ>
いかなる理由があろうとも妊娠中絶が禁じられていたコロンビア。そのためにひとつの命が救われたが、他のひとつの命が35年というあまりにも短い年月で失われることになった。しかし、35歳で生涯を閉じたマーサの訴えは、この国の妊娠中絶法を変える原動力となった。


15 団結と抗議〜労働組合の権利
会社だけでなく、国家とも闘わなければならないイランの労働者たち。不払い賃金の支払を求めてデモやストライキをすれば、当局に逮捕されて投獄されてしまう。それでもめげずに労働者の権利擁護を掲げて活動する組合員の取り組みを紹介する。

16 人権に関する国際的な条約について
国連憲章から世界人権宣言、もっと最近になって採択された児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)から障害者の権利に関する条約まで、各条約のエッセンスを掲載する。

18 マクシム・マクシモフを殺したのは誰だ
ロシアでは、プーチンが大統領に就任した2000年以降に殺害されたジャーナリストのうち、自ら追っていた微妙な問題の取材が原因で殺されたジャーナリストは14人に上る。内務省の汚職対策局の担当官の不正を暴いたマクシム・マクシモフも2004年6月に失踪(しっそう)し、いまだに多くの謎が残されたままである。

20 人権 ― その事実<NIJ>
経済的、社会的、文化的な権利の現状と見通しを、ミレニアム開発目標(MDGs)と現在のデータを通して見てみよう。

22 いまだに続くボパールの悲劇〜多国籍企業の人権蹂躙
1984年12月3日、インドのボパールにあったユニオンカーバイド社の工場からイソシアン酸メチルの有毒ガスが漏れ出す事故が起き、この月だけで8,000人以上が死亡したとされる。汚染された地域では、安全な水や食べ物を得る権利や安心して生活する権利が脅かされ、いまだに後遺症を抱える人々や、障害を持って生まれてくる子どもたちも見られる。しかし、ユニオンカーバイド社は責任を認めず、満足な保障もされていない。

23 死刑囚舎房からの手紙
米国のジョージア州で死刑執行を待つ身である死刑囚が、その思いをつづる。

24 僕が死刑廃止を支持する理由
1994年にフツ民族によるツチ民族の大虐殺が起きたルワンダ。昨年この国では、死刑が廃止された。多くの友人、親類、そして家族をも失ったフツ民族出身の筆者は、この国がいまだに引きずる苦難を乗り越えていくためにも死刑廃止は必要だったと主張する。

26 水という基本的な権利を守れ<NIJ>
人間が生きていくのに不可欠な水。その水が、公的な水供給事業の民営化によって、貧しい人々の手の届かない値段になってしまうという問題が世界各地で起こっている。ネパールから、そんな動きを阻止したグループの活動を紹介する。


【Special Feature】

27 永遠のマイノリティー

依然としてジプシーという呼び名の方がよく知られているロマ人。数千年にわたって虐げられてきた彼らも、自らの権利を国際社会に向けて主張し始めた。ロマ人の現状をルーマニアからリポートするとともに、インドにまでその起源をたどる歴史を振り返る。


31 世界のニュース
インドの貧困層の訴え/遺伝子組み換え作物禁止への反論(オーストラリア)/海洋汚染を引き起こす二酸化炭素削減策/コスタリカの米空軍基地の存続/同性愛者への差別(ウガンダ)/ほか

33 ビッグバッドワールド(風刺漫画)
米国のブッシュ大統領は、イラク石油の中毒者だ。

34 南の国からの一コマ
奴隷制が存在したブラジルの過去を振り返るパフォーマンス。

35 ワールドビーターズ
トルコ政治の構図は、他の国ではちょっと見られない特異なものだ。リベラルなイスラム政党率いるトルコ政府に対し、ファシスト寄りの民族主義を掲げるデヴレト・バフチェリと、彼が率いる民族主義者労働党の青年組織「灰色の狼」がにらみ合っている。

37 ミクスト・メディア
本・映画・音楽の紹介

40 ニューデリーで考える
グローバル化を積極的に受け入れ、まるで右派のように振る舞う左派に対して感じる失望。

41 社会を揺さぶる人々
チュ二ジアの「エイズと闘う協会」の活動について。

42 世界の国のプロフィール:カザフスタン<NIJ>

● NIジャパン No.96 目次 ●

(本文は日本語です)

 


A5判・モノクロ・48ページ
定価(本体600円+税)
ISBN978-4-8113-0234-8


2 イントロダクション ─ 人権について考えてみる

4 考えるためのネタ帳
今月のトピックに関する基本情報やトリビア。

6 テロへの不安と今日の人権状況(NI p4-6の翻訳)


2008年は、選手たちが技を競い合う北京オリンピック開催の年である。そしてまた、世界人権宣言が60周年を迎える年でもある。しかし最近では、私たちにとって本当に大切で、対応の技を進化させながら取り組んでいかなければならない人権が、「テロとの戦い」を口実に世界中で踏みにじられている。この記念すべき年に、デビッド・ランソムがその状況を検証する。

 ひとりの人間を拷問にかけることで他の多くの命が救われるとしたら、拷問は許される行為なのか? この問いかけに対して、「許されない」と答えることは難しい。だが、答えはどちらでも違いはないのかもしれない。なぜならば、拷問はこれまでも行われてきたにもかかわらず、結局人間は、自爆攻撃やテロ攻撃、または拷問よりもひどい仕打ちから逃れることができなかったからだ。こう考えてみれば、拷問で人間が救われるのかどうかという質問をする意味はあるのだろうか? 救われると信じることはできるのだろうか?
 倫理観や信念はおろそかにはできないかもしれない。しかし、そこに知識と根拠がなければ、苦悩に満ちた混乱がすぐに訪れることになる。いわゆる「テロとの戦い」と呼ばれているものは、その顕著な例だ。存在しなかった大量破壊兵器の追求を理由にして、英国はイラクに侵攻した。それは、現実から遊離していた英国首相が抱えていた道徳上の信念のようなものに、いちかばちか賭けてみた行為にすぎなかった。大量破壊兵器の存在を裏付ける証拠がまったく存在しない中で、今もなおテロとの戦いは続き、英国政府は容疑者を裁判なしで拘禁できる期間を延ばそうと粘っているが、そこには警察からの意向が働いているとも言われている。政府が次にどのような手を打ってくるのか、ちまたで噂になっていることが本当なら、まさに今、英国人は、終わりが見えないと思われる自宅軟禁のような状態に置かれ、聞いたこともないような罪と証拠で起訴され、裁判に出席できずに反論もできないという状況に直面する可能性がある。

・・・・・・ 続きはNIジャパン誌上でご覧ください

12 オリンピックは中国の人権状況を改善できるのか(NI p10-11の翻訳)

この8月、北京オリンピックスタートの号砲がとどろく。しかしこの祭典には、その裏側に隠されている危険なものが噴き出してくるリスクが伴っている。人権の「向上」という中国の約束は、今なおひどく裏切られたままである。その状況をサム・ギールがリポートする。

 そのニュースが流れるやいなや、突如として歓声がわき起こった。その時に北京の町を包んだ活気は、1989年の民主化デモ以来の力強さを感じるものだった。そのきっかけとなったのが、2001年に国際オリンピック委員会(IOC)が発表した2008年のオリンピック開催地を北京にするという決定であった。
 しかしその決定がすぐに物議を醸した。一党制の国である上、中国一国だけで毎年世界の他の国々の死刑執行者数を合計したよりも多くの死刑を執行していることもあり、そのような国をオリンピック開催国に選ぶことは、オリンピック・ムーブメントの考え方[訳注*]に矛盾するのではないかとの疑問がすぐに投げかけられた。だが、それに対する答えは明確であった。「我々は、オリンピックが[中国の]人権状況の向上を促すと確信している」とIOCのジャック・ロゲ委員長は述べた。現在彼は、この言葉通りの状況になって8月を迎えられることを願っているだろう。
 世界の大国として台頭を始めた中国は、強烈な存在感を示している。1980年代の経済改革以来、中国は世界で最も高い経済成長率を維持し続けている。そしてその経済に見合うだけの目を見張る社会的な業績もいくつか上げている。2億人の中国人が貧困から抜け出したが、この数は全世界の貧困者削減数の4分の3にあたる。現在の若い世代は、大胆なファッションにも注目し、大都市のショッピング街では買い物に精を出し、最近まで質素と横並びが特徴的だった文化を再定義するような抜け目のない消費者に育った。

・・・・・・ 続きはNIジャパン誌上でご覧ください

17 メダルにはほど遠い中国における人権(NI p11からの翻訳)

19 中絶で生きられたはずの母の訴え(NI p13-14の翻訳)

コロンビアの妊娠中絶法を変えるきっかけとなったある悲劇を、ジーンス・エリック・グールドが報告する。

 自分の命がそう長くは続かないことを知っていたマーサ・ソーライ。彼女は母の日にも痛みに耐えていた。長女のイエニーが鎮痛剤を注射すると、胎児のように丸まったマーサは顔を手で覆い、苦痛に叫び声を上げた。2歳になるダニエラは、不思議そうな顔をしてそばに立ち、叫ぶ母とテレビに映るターザンのアニメ番組を交互に眺めていた。まだ幼いダニエラが、もしかしたら自分自身の中絶が母の命を救っていたかもしれないということを理解するのは無理な話だった。
 3年前、マーサの子宮にがんが発見された。しかし彼女はこの時すでに妊娠2カ月で、おなかの中にはダニエラがいたのである。彼女は出身地のペレイラで治療を受けていたが、そこの医師たちはがんを直す可能性がある放射線治療を行わなかった。その理由は、放射線治療で胎児が死ぬ恐れがあり、それは例外なく違法行為となるからだ。妊娠期間中、マーサは何もできず、ただ待つしかなかった。だがそのために、がんは末期状態にまで進行してしまった。

・・・・・・ 続きはNIジャパン誌上でご覧ください

25 人権 ― その事実(NI p20-21の翻訳)

32 「権力への執着を打ち負かす愛情の力」(NI p7の翻訳)

36 水という基本的な権利を守れ(NI p26の翻訳)

40 もっと知るためのネタ帳
今月のトピックをもっと深く知りたい、何か行動したいという人のための日本の情報源。

42 世界の国のプロフィール:カザフスタン(NI p42の翻訳)

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