2010年4月号

NI No.431 & NIジャパン No.119

ストップ! オイルサンド
Bloody oil - Shut down the tar sands!

膨大なオイルサンドのおかげで石油大国となったカナダ。今この国で、オイルサンド採掘による環境破壊、現地の人々の健康と暮らしへの悪影響、先住民族の権利侵害が問題となっている。

このオイルサンドとは、油分が含まれた土壌のことで、掘り出して熱湯をかけて油分を分離するか、何カ月も地中に水蒸気を送り込み、油分の粘性を下げてからパイプでくみ上げる。こうしてとれた油分(ビチューメン)は、さらに熱・圧力・化学物質を加えて改質してようやく通常の原油と同じように利用できる合成原油となる。

かなりエネルギーが必要で(炭素排出量も多く)コストがかかる資源だが、原油価格の高騰により、オイルサンドでも十分利益が見込めるようになった。そして2003年から、オイルサンドの埋蔵量が世界の原油埋蔵量に含まれるようになり、今やカナダはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の石油大国である。

しかしこのオイルの富により、民主的で環境に配慮する自然豊かなイメージで語られるカナダという国がおかしくなっている。

今月は、その現場であるアルバータ州の現実を伝えると共に、オイルサンド開発中止を求めて立ち上がった市民活動の最前線を報告する。

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● NI No.431 目次 ●


(本文は英語です)


*<>の表示がある記事は、日本版に翻訳(全訳)もしくは要約記事を掲載しています。


2 読者の声


4 この非在来型原油を受け入れられない理由<翻訳>
二酸化炭素の排出、環境破壊、地域に住む先住民の暮らしと健康への悪影響など、世界で最も有害な産業プロジェクトと言われるオイルサンド開発。それはいったいどのようなもので、環境と人間にどのような影響を及ぼし、その中止を求める人々はどんな方法で政府や企業と渡り合っているのだろうか。

8 カナダが抱える不幸の源<要約>
かつて、いや、今も多くの人々が、カナダと聞けば雄大な自然、リベラルな政治、人種的に寛容な社会、環境重視などのイメージを思い浮かべるだろう。しかし、オイルサンドの生産が本格化してから、この国も石油の呪いにとらわれ、現実はそんなイメージから遠ざかりつつある。はたしてカナダは、堕落した石油国家に成り下がってしまったのだろうか。

10 土から原油へ〜オイルサンド採掘2つの方法<翻訳>
露天掘りと地層(油層)内回収法について。

11 モルドールからの脱出
カナダの自然を救うためには、米国と結んだNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しが不可欠だ。NAFTAでは、カナダのオイルサンド生産と米国への輸出に条件が設けられ、企業に対する環境的・社会的な縛りが制限されている。これに対し、カナダ国内ではどのような動きが起こっているのか。

12 死ぬまで闘い続ける決意<要約>
オイルサンド採掘による最大の被害者は自然環境であるが、その自然に依存して生きてきた地元の先住民族も生活と健康に大打撃を受けている。小さなコミュニティーでのまれながんの発病、川魚の奇形、味が変わってしまったカモの肉、自然の恵みに頼った生活が崩れ、採掘企業が与える仕事に頼らざるを得ないという経済状況の変化……。企業や政府のやり口から、健康被害と問題に立ち向かう人々の動きと決意まで、先住民の視点から現状を報告する。
 →先住民の健康被害を公にした結果告発された医師のインタビューを読む


16 燃える岩
オイルサンドは、ベネズエラでも大規模な埋蔵が確認されているほか、コンゴ共和国やマダガスカルなどでも埋蔵が分かっている。そして、オイルサンドと共に「非在来型原油」と呼ばれるオイルシェール(石油に変化する有機物を含んだ岩や堆積物)も世界中で埋蔵が確認され、大手石油企業が食指を伸ばしている。今回は、国際石油資本のシェル社がオイルシェール開発を進めるヨルダンと米国の現場を訪ねた。

17 オイルサンドの惑星<翻訳>
この地図が示すのは、シェル社が開発の意向を持つ「非在来型原油」の埋蔵地域である。

18 誰にでも関係してくる問題
オイルサンド生産のインフラは北米で整備されているが、その資金は世界中からかき集められているものだ。その実態が知られるようになるにつれ、抵抗運動のネットワークは世界に広がっている。

20 アクション
オイルサンド開発に関係する企業、金融機関、政府に圧力を加え、中止に向けた運動を支援しよう。


【Special Features】
21 エチオピアの民主主義の危機

不安定な地域にあって、民主主義的なスタイルを保ってきたエチオピア。しかし最近、メレス・ゼナウィ首相率いる政府は、政府に異論を唱える者たちを弾圧し、投獄し、報道の自由も沈没寸前である。しかし欧米諸国は、スーダンやソマリアに隣接するこの国は「テロとの戦い」の重要なパートナーであるという理由から、そんな内部の変化を見て見ぬふりをしている。今年5月に行われる選挙に向け、国内情勢を分析する。

24 マグロは氷山の一角:深刻な海の問題<要約>
マスメディアは、マグロやクジラをめぐる国際政治劇場で起こるドタバタ劇ばかりを報道する。そして私たちは、なじみの深い魚の話に目を奪われがちである。だが、マグロやクジラのことは海の問題の一部にすぎず、状況はずっと深刻だ。あらゆる魚種の資源量減少、海洋汚染、無法な振る舞いの海賊漁船の存在など、海の問題はもっと大きな視野でとらえなければならないものなのだ。海が抱える問題と、その解決策について探る。

28 ある兵士の物語
インドが占領を続けるカシミール地方の戦闘で仕掛け爆弾の攻撃に遭い、顔と体に150針縫う瀕死の重傷を負い、両目を失い、顔面再生手術を受けた元インド陸軍少佐。陸軍時代の経験と、現在考えるカシミールに平和をもたらす方法について彼が語る。



30 世界のニュース<*のついた記事を要約で掲載>
*クーデターへの抵抗運動(ホンジュラス)/クラスター爆弾の禁止(兵器)/遺伝子組み換えのナス(インド)/ウガンダの抑圧的な法律(同性愛者の権利)/*生臭いビジネスの犠牲(西サハラ)/ほか

31 オンリー・プラネット(4コマ漫画)
人間がやめられない嗜好品を試すゴートとクラーツ。

33 ビッグバッドワールド(風刺漫画)
すべては陰謀なのか。

34 ミクスト・メディア
本・映画・音楽の紹介

36 世界の国のプロフィール:チュニジア

NI日本版 No.119 目次

(本文は日本語です)

 


1 この非在来型原油を受け入れられない理由 (NI p4-7の翻訳)

オイルサンド*は、地球上で最も有害な採掘プロジェクトと言われている。現在、それを中止に追い込むキャンペーンが弾みをつけている。ジェス・ワースがその流れの真っただ中から報告する。

 「もしも地域の先住民コミュニティーがサンライズ・プロジェクトを望んでいないというのであれば、もちろん我々がそれを実施することはありません」。石油大手BP社の英国BP最高経営責任者、ピーター・メイザーは私に向かって真剣にそう言った。
 私は自分の耳を疑った。初めてのオイルサンド参入への準備を整えた巨大石油企業が、地元住民の反対に遭った場合には手を引くということを想定しているのだろうか? その夜は、さらにおかしなことが続いた。
 英国のオックスフォードにあるぜいたくなランドルフホテル。昨年10月、私はこのホテルで行われたBP社の最も重要な就職説明会に、学生の活動家グループと一緒に参加した。そこには工学系と地質学系の学生が100人ほど集まり、気前よくワインとカナッペが無料で振る舞われていた。おそらく、この多国籍企業で働けば手が届くかもしれない生活を体験させようという趣向なのだろう。
 実はこの場所には、その英国BP最高経営責任者も来ていて、説明会の重要性を言葉巧みに訴える講演を行っていたのである。石油業界は全体的に深刻な人手不足に直面している。従業員の平均年齢は49歳だが、定年退職者の平均年齢は55歳である。現在推定で10万人の人材不足とも言われている。良い人材を雇えるかどうかは企業の生き残りを左右する鍵となっている。
 そこでメイザーは、同社がどんなに勢いがあり、環境にやさしく、成長しているのか、参加しているオックスフォードの一流の学生たちに話をした。だが彼が話し始めたとたん、私と一緒に参加した学生活動家のうち2人がステージに上がり、彼の口からは語られないようなプレゼンテーションを行った。

・・・・・・ 続きはNIジャパン誌上でご覧ください

7 死ぬまで闘い続ける決意(NI p12-15からの要約)

オイルサンド採掘による汚染で、先住民族の健康被害が広がっている。ゾエ・コーミエが、がん発生率、隠ぺい工作、人間の勇気に関する衝撃の事実を報告する。

フォートチプヤンの小さなコミュニティーの住民の間でがんが発生している。その上流で行われている世界最大級のオイルサンド開発が原因であることは明らかである。生産過程で出る汚水をためる、かつてないほど巨大なくず鉱池があり、そこから有毒な水が地域の河川に戻っていると考えられている。
 それは、ヒ素、水銀、カドミウムなどの重金属と発がん性の化合物が混ざった汚水の「池」だが、砂のような地質では土中への浸透を防ぐことはできない。これまで企業も政府も、浸透するのはわずかであって、きちんと管理していると言ってきた。しかし現在、アサバスカ川に毎日少なくとも1,100万リットルもの有毒物が流入していることが分かっている。(1) アサバスカ川流域で最も影響を受けているのが、フォートチプヤンというへき地にある町に暮らす1,200人あまりの先住民族で、ミキソー・クリー、メティス、アサバスカ・チプヤンの各民族の人々である。
 人々は長い間不安を抱えてきた。とった魚には腫瘍ができていたり、口が2つあったりなどの奇形が見られ(2)、カモ肉の味はおかしく、ヘラジカの肝臓は病斑に覆われていた。特に、狩猟と漁をしながら森の恵みに依存して暮らすフォートチプヤンの人々にとって、この状況は大問題である。
 ここでは以前に比べて病気にかかる人が増えた。免疫系疾患、糖尿病、狼瘡[訳注:皮膚が破壊されあざのようになる]の発病。そしてがんに関しては、小さなコミュニティーにもかかわらず特殊ながんの患者が多い。この状況を懸念した地元のジョン・オコナー医師は、2006年に地域の実情を公にし、その真相究明への闘いは今も続く。

・・・・・・ 続きはNIジャパン誌上でご覧ください

10 カナダが抱える不幸の源(NI p9からの要約)

汚れた石油を熱心に追い求めるカナダは、堕落した石油国家に変わってしまった。アンドリュー・ニキフォルックはこう断言する。

 ヨーロッパの人々は、カナダは「善行を行う」民主国家で、広大な森林、手つかずの川や湖、住みやすい都市に恵まれていると考えてきた。しかし、急速に進むオイルサンドの開発は、カナダの環境重視という評判を汚しただけでなく、この国の政治経済的特徴をも傷つけてしまった。約10年前、サウジアラビアとメキシコに代わり、カナダが米国にとって最大の石油輸入先となった。それからというもの、カナダは石油等の炭化水素エネルギーの積極的な擁護者となり、他のことには目を向けなくなった。気候変動対策の遅れ、環境負荷の低いエネルギーに対する投資の少なさ、石油ロビイストなど、カナダの現実はひどいもので、説明責任を果たさず透明性もなく、それは似たような石油国家サウジアラビアと同レベルである。

ビチューメンのブーム

 ビチューメンは超重質の炭化水素で、アスファルトによく似て粘性が高く、溶剤で希釈しないとパイプラインで送ることもできない。また、軽質油[訳注:粘性が低い一般的な原油]と成分が異なるため、改質して「合成原油」にする必要がある。合成原油は、米国や北海の原油に比べて硫黄、酸化物、重金属が多く含まれている。そのためビチューメンは、世界で最もコストが高い原油で、1バレルあたり60〜80ドルにもなる。一方米国の国内産原油は、1バレルあたり10ドルで生産が可能だ。

・・・・・・ 続きはNIジャパン誌上でご覧ください

11 オイルサンドの惑星(NI p17からの翻訳)/土から原油へ〜オイルサンド採掘2つの方法(NI p10からの翻訳)/油層内回収法の仕組みと問題

12 アクション! ─ 何かする・もっと知る/日本での動き
・日本の団体と参考ウェブサイト、本、資料などの情報。
・日本とオイルサンドのかかわり、どこから来て、どこへ行くのか。

14 今月のフォーカス(NI p24-27の要約)
マグロは氷山の一角:深刻な海の問題
マスメディアは、マグロやクジラをめぐる国際政治劇場で起こるドタバタ劇ばかりを報道する。そして私たちは、なじみの深い魚の話に目を奪われがちである。だが、マグロやクジラのことは海の問題の一部にすぎず、状況はずっと深刻だ。あらゆる魚種の資源量減少、海洋汚染、無法な振る舞いの海賊漁船の存在など、海の問題はもっと大きな視野でとらえなければならないものなのだ。海が抱える問題と、その解決策について探る。

15 世界のニュース(NI p30、32からの要約)
・クーデターへの抵抗運動(ホンジュラス)
・生臭いビジネスの犠牲(西サハラ)
・SPEECHMARKS(ブルース・スプリングスティーン)

16 編集後記、次号のお知らせ、ほか

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